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2012 年度 実施状況報告書

初期太陽系史の完成を目指して

研究課題

研究課題/領域番号 24540525
研究種目

基盤研究(C)

研究機関東京大学

研究代表者

杉浦 直治  東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80196716)

研究分担者 高畑 直人  東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (90345059)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード初期太陽系 / 年代測定 / エイコンドライト / Mn-Cr / Al-Mg
研究概要

本研究計画では隕石物質中のAl-Mg年代とMn-Cr年代を比較して26Alが太陽系に一様に分布していたかどうかを確かめることを主目的とし、最終的には初期太陽系の歴史の完成を目指しています。今年度の主な実績は、Mn-Cr年代測定の標準試料を作成したことです。上述の目的のために、本研究ではエイコンドライトの年代測定を行いますが、その測定対象は鉄に富んだオリビンです。このオリビン中のMn/Cr比と、Crの同位体比を二次イオン質量分析計で測定することにより、年代を決定します。その際Mn/Cr比の測定にはこの比がきちんとわかった標準試料が必要です。この標準試料の作成は困難な作業で、これにほとんどの時間を費やしました。困難な理由は鉄にとんだオリビンを作るには酸化的環境が必要ですが、あまり酸化的すぎると酸化鉄が析出するし、Crが入りにくくなる傾向があるからです。本研究では、適切なフラックスを使用することにより、比較的低温で組成の均一な、大きなオリビン結晶が得られることを確認しました。これは他の方法では得られない長所です。
また、測定対象のエイコンドライトとしてNWA6693というエイコンドライトを準備しました。この中にはFa#が最大で66程度の鉄にとんだオリビンがあり、そこにはCrは検出できない程度しか入っておらず、Mn/Cr比が大きく年代測定に適していることを確認しました。また長石も存在しておりAl-Mg系の年代測定も原理的に可能であることが解っています。またPb-Pb年代は4563Ma程度と報告されており、Mn-Cr年代を求めるのに十分なほど古い年代を持っていることが解っていますので、本研究の目的達成のために最適の試料を得られたと考えています。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

目的の達成度は60%程度です。その理由としてはまず、オリビンの標準試料の作成は1つはできたのですが、鉄含有量の異なるものをそろえる必要があり、それは次年度の課題として残ってしまいました。
またエイコンドライト試料についてはNWA6693を準備できたのはよかったのですが、それ以外にはあまり2次イオン質量分析計でMn-Cr年代測定のできる隕石試料を手に入れることができませんでした。しかし一方でAl-Mg系の年代測定ができるエイコンドライト試料はいくつか入手できました。NWA2736,NWA4301とNWA1240がこれに相当する隕石です。これらは熱イオン化質量分析計でMn-Cr年代を測定してもらえる可能性があります。またPb-Pb系の年代測定を依頼して分析してもらえる可能性もあります。この様な方法でも、26Alの一様性を確かめることができます。これまでは自分の研究手法の守備範囲内で完成する研究を目指していましたが、他の研究者を巻き込んで研究を推進するように、若干の方針の転換が必要かと思っています。
また2次イオン質量分析については今年度は実際に測定をするところまで至りませんでしたが、利用予定のナノシムスは年をおって、測定性能が上がっており、次年度に持ち越したことは必ずしも大きな損失とはなっていません。

今後の研究の推進方策

平成25年度はまず、Mn-Cr系の標準試料のオリビンをそろえること最優先の課題とします。これは、実際の年代測定に必要なことはもちろんですが、最近、競合する研究グループによって、鉄に富むオリビンの標準試料の作成に関する論文やアブストラクトが発表されているからです。Mn-Cr系の測定できる隕石試料は限られていますから、早く測定を行わないと2番煎じになっては何の臣もありません。
標準試料ができたら直ちにNWA6693エイコンドライトのMn-Cr系の年代測定を行います。その次にはAl-Mg系の年代測定を行います。Pb-Pb年代と合わせて、これで年代のデータが一揃いできますから、これを使って、初期太陽系における26Alの分布について何らかの結論が出せます。
後は、未分類のエイコンドライトを取得して、その鉱物組成を調べて、NWA6693と同様な2次イオン質量分析計による測定のできるものがあれば、自前の測定を行います。一方でAl-Mg系の測定はできるけれどもMn-Cr系の測定は2次イオン質量分析では難しいのであれば、熱イオン化質量分析の研究者に依頼して、Mn-Cr系の年代測定を行ってもらいます。
この様にしてできるだけたくさんの種類のエイコンドライトについてAl-Mg系とMn-Cr系の年代測定を行い、26Alが初期太陽系に一様に分布していたかどうかを確かめます。

次年度の研究費の使用計画

オリビンの標準試料の作成のために白金箔をはじめとする薬品をかなりたくさん購入する必要があります。また24年度はNWA6693以外に測定に適した隕石試料を入手できなかったので次年度は、多少高価であっても、いくつかのエイコンドライトの試料を購入する必要があります。
また、ラップトップコンピューターを更新し、学会発表を支障なく行えるようにする必要があります。
次に、2次イオン質量分析計のメインテナンスに必要なものがあります。質量分析においては、イオンソースや、検出器は消耗品なので必要に応じて購入する必要があります。
あと、大きな支出としては、旅費があります。今夏と来春の海外の国際学会に出席するためにかなりの金額が必要になります。
研究が順調に進めば、論文を書くことになりますが、その場合にはカラーページ料金がかかります。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (10件)

  • [雑誌論文] Mn–Cr ages of dolomites in CI chondrites and the Tagish Lake ungrouped carbonaceous chondrite2013

    • 著者名/発表者名
      W.Fujiya, N.Sugiura, Y. Sano and H.Hiyagon
    • 雑誌名

      Earth Planet. Sci. Lett.

      巻: 362 ページ: 130-142

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Eclogitic clasts with omphacite and pyrope-rich garnet in the NWA 801 CR2 chondrite2013

    • 著者名/発表者名
      M. Kimura, N. Sugiura, T. Mikouchi, T. Hirajima, H. Hiyagon, and Y. Takehana
    • 雑誌名

      American Mineralogist

      巻: 98 ページ: 387-393

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 隕石中の炭酸塩の年代測定から探る含水小惑星の形成と進化2012

    • 著者名/発表者名
      藤谷 渉,杉浦 直治,佐野 有司,比屋根 肇
    • 雑誌名

      日本惑星科学会誌

      巻: 21 ページ: 350-367

    • 査読あり
  • [学会発表] A preliminary petrographic study of several mesosiderites2013

    • 著者名/発表者名
      N.Sugiura
    • 学会等名
      44th Lunar Planetary Sci. Conf.
    • 発表場所
      Houston, Tx. USA
    • 年月日
      20130317-20130322
  • [学会発表] STRONTIUM ISOTOPE ANOMALIES AND 26AL-26MG CHRONOLOGY IN CAIS FROM CV CHONDRITES2013

    • 著者名/発表者名
      K. Myojo, T. Yokoyama, Y. Sano, N. Takahata and N. Sugiura
    • 学会等名
      44th Lunar and Planetary Science Conference
    • 発表場所
      Houston, TX, USA
    • 年月日
      20130317-20130322
  • [学会発表] A Single Grain U-Pb and Pb-Pb Dating and D/H Ratios of the Phosphate Mineral in ALH840012012

    • 著者名/発表者名
      M. Koike, Y. Ohta, N. Takahata, Y. Sano, N. Sugiura
    • 学会等名
      AGU Fall Meeting
    • 発表場所
      San Fransisco, CA. USA
    • 年月日
      20121203-20121207
  • [学会発表] Did Mesosiderites See the FU Orionis Outbursts of the Solar Nebula?2012

    • 著者名/発表者名
      N.Sugiura
    • 学会等名
      39th Symposium on Antarctic Meteorites
    • 発表場所
      国立国語研究所、東京都
    • 年月日
      20121129-20121130
  • [学会発表] A Single Grain U-Pb Dating and D/H Ratios of Phosphate Minerals in ALH840012012

    • 著者名/発表者名
      M. Koike, Y. Ota, N. Takahata, Y. Sano, and N. Sugiura
    • 学会等名
      39th Symposium on Antarctic Meteorites
    • 発表場所
      国立国語研究所、東京都
    • 年月日
      20121129-20121130
  • [学会発表] Igneous clasts in the Northwest Africa 801 CR2 chondrite: REE and oxygen isotopic studies2012

    • 著者名/発表者名
      H. Hiyagon, N. Sugiura, N. T. Kita, M. Kimura, T. Mikouchi, Y. Morishita and Y.Takahata
    • 学会等名
      39th Symposium on Antarctic Meteorites
    • 発表場所
      国立国語研究所、東京都
    • 年月日
      20121129-20121130
  • [学会発表] 初期太陽系の年代学・物質進化に関する研究2012

    • 著者名/発表者名
      杉浦直治
    • 学会等名
      日本地球化学会
    • 発表場所
      九州大学、福岡県
    • 年月日
      20120910-20120913
  • [学会発表] Accretion ages of meteorite parent bodies and its correlation with 54Cr anomalies: An update.2012

    • 著者名/発表者名
      Sugiura N. and Fujiya W.
    • 学会等名
      75th Meteoritical Society Meeting
    • 発表場所
      Cairns, Australia
    • 年月日
      20120812-20120817
  • [学会発表] 26Al-26Mg and 10Be-10B systematics in CAIs from CO and CV chondrites2012

    • 著者名/発表者名
      K. Myojo, T. Yokoyama, Y. Sano, N. Takahata, and N. Sugiura
    • 学会等名
      Goldschmidt Conference
    • 発表場所
      Montreal, Canada
    • 年月日
      20120624-20120629
  • [学会発表] 54Cr anomalies and accretion ages of meteorite parent bodies.2012

    • 著者名/発表者名
      Sugiura N. and Fujiya W.
    • 学会等名
      Japan Geoscience Union Meeting 2012.
    • 発表場所
      幕張メッセ、千葉県
    • 年月日
      20120520-20120525

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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