研究実績の概要 |
本研究の目的は、消滅核種26Alが太陽系に一様に分布していたことを確認し、初期太陽系の歴史を完成させることでした。一様分布を確かめるためには(1)Mn-Cr系の年代をAl-Mg系の年代と比較する、(2)26Alを熱源と考え隕石母天体の熱史(これも主にMn-Cr系年代で解明される)をとおして、間接的に比較する、の2つの方法があります。 今年度の成果 Mn-Cr年代を正確に得るには、Mn/Crの相対感度を正確に知る必要があります。昨年度に使用した標準試料はMn/Cr比の一様性に問題が残されており、またその組成も限られていました。今年度は一様性のより良い、より広い組成の標準試料を準備しました。これによって、組成に起因する不確実性は減少しました。しかしこれ伴って他の要因による不確実性が露呈しました。すなわち装置の分析条件によって相対感度が変化するという問題があり、信頼できる年代を得るためには、標準試料と隕石試料を交互に測定することが必要になりました。このため、2個のCVコンドライトの鉄に富むオリビンの年代だけが得られ、これはCM,CIと似た値でした。 全体の成果 26Alが一様に分布していた場合に、エイコンドライト母天体が速い時期に集積し、次に普通コンドライト、最後に炭素質コンドライト母天体が集積したと考えると、すべてが整合的に説明できます(Sugiura and Fujiya, 2014)。しかし、現在でも不均質な26Alの分布を提唱している人はいて、エイコンドライトの場合にも26Alは少量しか含まれていなかったと主張しています。しかしこの場合、エイコンドライトの古い年代を説明するには、母天体が非常に小さいことが必要で、全体としてのモデルの整合性は均質な分布を考えた方が良いと思います。将来的には、より精度の高い年代測定によって決着がつけられるはずです。
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