研究課題/領域番号 |
24540527
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
壷井 基裕 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (60411774)
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研究分担者 |
淺原 良浩 名古屋大学, 環境学研究科, 助教 (10281065)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 花崗岩 / 同位体 / ストロンチウム |
研究概要 |
本年度は西南日本領家帯神原トーナライトと東北日本只見川花崗岩類を中心に、ストロンチウム安定同位体分別機構の解明に適した花崗岩体を探すために、野外調査ならびに全岩化学組成分析を行った。また、誘導結合プラズマ質量分析装置で希土類元素を分析する際の分析操作方法の改良を目指した。神原トーナライトについては、幡豆岩体について野外調査ならびに蛍光エックス線分析法による全岩化学組成分析を行った。その結果、下山岩体と幡豆岩体は岩石化学的特徴が異なることが分かった。只見川花崗岩類はCIコンドライトにより規格化した希土類元素パターンにおいて、Eu異常の程度にバリエーションが認められ、単一花崗岩体内におけるストロンチウム安定同位体の挙動を明らかにする際に適した花崗岩体であることが明らかとなった。誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)による希土類分析法の改良について、蛍光エックス線分析に用いた溶融ガラスビードを酸分解して試料溶液を調製することにより、新たに岩石を分解するよりも効率的に分析を行うことが可能となる。また、この方法を用いることにより、すでにアルカリ溶融法により試料を分解しているため、通常の分析で用いられる酸分解のみの方法よりも希土類元素を濃集する重鉱物の分解が良くなる。さらに、2g程度と多くの岩石試料を分解しているため、試料の不均質の影響が軽減できるというメリットがある。しかし、この試料溶液を直接ICP-MSで分析する際に融剤が高濃度に含まれるため、問題となってくる。現在、融剤を除去するための陽イオン交換カラムによる希土類分離システムを構築中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はストロンチウム安定同位体の測定までには至っていないが、東北日本の只見川花崗岩類において単一の花崗岩体より様々なEu異常のバリエーションを持った試料を見いだした。当初予定していた領家帯神原トーナライトよりもストロンチウム安定同位体分別機構の解明に適した花崗岩体であると考えられる。全岩化学組成、希土類元素組成等基本的な岩石化学的データが揃っているため、残りの測定であるストロンチウムの放射起源と安定同位体分析を行うことにより、同位体分別メカニズムに関する新しい知見が得られる可能性が高い。なお、この測定は平成25年度中に完了する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
東北日本只見川花崗岩類について、ストロンチウム放射起源ならびに安定同位体分析を行い、野外での産状や前年度までに得られた化学組成データ、なかでも希土類元素組成と対比しながらストロンチウム安定同位体の挙動について考察する。また、当初の計画通り単一のマグマが分化して形成したと考えられる大阪府北部に分布する山陽帯剣尾花崗岩について、主に希土類元素の分析を行い、この岩体においてもモデルケースとして安定同位体分別の機構について考察する予定である。さらに、ストロンチウム安定同位体分別メカニズムの解明に適していると考えられる高知県南西部の足摺岬複合貫入岩体についても調査を開始する。
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次年度の研究費の使用計画 |
おもに岩石粉砕装置(遊星型ボールミル)の形式を見直したため、次年度への繰り越し研究費が生じた。次年度において、請求する研究費と合わせてメノウ製の自動乳鉢を導入し、より効率的に岩石粉末を作製するとともに、足摺岬複合貫入岩体等の調査旅費と同位体分析のための出張旅費等に使用する予定である。
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