研究課題/領域番号 |
24540529
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西山 修輔 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30333628)
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研究分担者 |
後藤 基志 核融合科学研究所, 高温プラズマ物理研究系, 准教授 (00290916)
佐々木 浩一 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50235248)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | プラズマ計測 / シュタルク分光 / 飽和吸収分光 / シース電界 / 電界計測 |
研究概要 |
本研究は、半導体レーザーによる飽和吸収分光法をプラズマ計測に応用し、シュタルク分光計測に基づくプラズマ中の高感度電界計測技術の開発が目的である。測定対象として種々のプラズマプロセスに用いられるアルゴンプラズマを選択し、初年度は基礎データとしてアルゴン原子の遷移線の選択およびそれらの飽和吸収スペクトルの特性の測定を行った。 飽和吸収分光法の理論的検討から、飽和吸収スペクトルを得るためには、上準位または下準位における緩和レートが小さい吸収線が望ましいことがわかる。従って、準安定状態 4s[3/2]_2, 4s[1/2]_0 を下準位とする遷移が適していて、比較的大きい遷移確率を持ち半導体レーザーの発振波長範囲にある遷移として、4s[3/2]_2-4p[3/2]_2(763.511nm)と4s[3/2]2-5p[3/2]2 (415.859nm) を選択した。 これらの波長における飽和吸収スペクトルの線幅を測定した。763.511nmでは十分な吸収があり、半値全幅が10MHz程度の明瞭な飽和吸収スペクトルが得られた。1kVのパルス電圧を印加した電極の近傍でも線幅に変化は見られなかったが、これは準位の主量子数が4と小さくシュタルク効果が線幅より小さく検出できなかったためと思われる。415.859nmでは吸収が弱く、ポンプ光を断続しロックインアンプを使用して飽和吸収スペクトルを得た。線幅は約3MHzであったが、理論から予測されるローレンツ型と一致せず再現性も悪いため、レーザーの安定度が主に影響していると思われる。この遷移の自然幅は0.3MHzと狭く上準位の主量子数が763nmの遷移よりも大きいため、測定系の改善により電界によるシュタルク効果で線幅の広がりが検出できる可能性がある。 アルゴン励起準位のシュタルク効果の理論計算は4p準位については可能になり、実験結果との比較を今後行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に予定していた、アルゴン原子のスペクトルの検討、測定体系の構築、シュタルク効果の理論計算について、おおむね予定していた成果を得たと考えている。 スペクトルの検討については、データベースを精査して利用可能な遷移を選択した。 測定体系の構築については、プラズマ発生装置と飽和吸収分光計測体系を稼働させ、飽和吸収スペクトルの特性評価を行うことができた。 シュタルク効果の理論計算については、数値として結果を得られるようになった。今後、実験との比較によって妥当性を確かめる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、飽和吸収スペクトルに現れる電界の影響を検出し、定量的に評価できるようにして、電界の計測に結びつける。 415.859nmの吸収線では自然幅が狭く電界の影響が明確に現れると期待できるので、レーザーの周波数安定度を向上させてスペクトル幅を高精度に評価し、電界印加によるスペクトルの変化を検出する。スペクトル幅の変化の検出が困難であれば、ヨウ素セルなどの波長基準を用いてのスペクトルピークのシフトの検出も検討する。 平行平板電極などによる既知電界下で、スペクトル幅の変化あるいはシフト量を測定し、理論計算の結果と比較して電界検出感度や検出限界の評価を行う。また、定常シースの電界の空間分布の計測を行い、シース理論と比較する。さらには、パルス電圧印加による過渡的シースの電界計測を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度の実支出額が当該年度の所要額を下回った理由は、主要物品の購入において納入価格を予定より削減できたこと、光学部品の購入費が予定より少なく済んだことによる。 この分は翌年度にレーザー安定化に必要な機器および光学部品の購入に使用する予定である。
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