研究課題/領域番号 |
24540529
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西山 修輔 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30333628)
|
研究分担者 |
後藤 基志 核融合科学研究所, 高温プラズマ物理研究系, 准教授 (00290916)
佐々木 浩一 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50235248)
|
キーワード | プラズマ計測 / シュタルク分光 / 飽和吸収分光 / シース電界 / 電界計測 |
研究概要 |
本研究は、半導体レーザーによる飽和吸収分光法をプラズマ計測に応用し、シュタルク分光計測に基づくプラズマ中の高感度電界計測技術の開発が目的である。第2年度は、初年度に得られたアルゴンプラズマにおける飽和吸収スペクトルの特性を踏まえ、アルゴンの他、ヘリウム、および水素プラズマによる飽和吸収スペクトルの検出と電界印加によるスペクトル形状の変化の検出を目指して実験を行った。 自然幅が0.27MHzであるアルゴン4s[3/2]2-5p[3/2]2 (415.859nm)の遷移において、安定化した半導体レーザーを用いて飽和吸収スペクトルの測定を行い、6.4MHzの半値全幅のスペクトルを得た。この線幅は主にリファレンスキャビティの安定度と制御系の応答性に依存しており、-300Vを印加した電極表面近傍ではシース厚さの増加に伴い励起アルゴン原子の減少よる吸収の減少は見られたが、線幅の変化は-1kVのパルス電圧を印加しても確認できなかった。また、ヘリウム原子の2S(J=1)-2P(J=2)遷移(1083.034nm)ではシュタルク効 果の理論計算が可能で10kV/cmの電界で2.2MHzのシュタルク広がりが生じるが、-1kVのパルス電圧を印加した電極表面近傍ではスペクトル形状の変化を確認できなかった。水素原子もシュタルク効果の計算が可能であり、バルマーα線の2P(J=1/2)-3D(J=3/2)(656.271nm)では1次のシュタルク効果によって50V/cmの電界で250MHzのシュタルク分裂が生じる。実験では波長変調法と飽和吸収分光法を併用して光学的に薄いバルマーα線の微細構造を持つ飽和スペクトルを得ることができた。電界下でのスペクトルの変化は確認できなかったが、測定系の波長分解能は十分にあるため、今後シース厚さなどを制御して電界計測を目指す。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
第2年度は飽和吸収スペクトルに生じるシュタルク効果の定量的な評価を行う計画であったが、高分解能の飽和吸収スペクトルを得ることができたものの、シュタルク効果の直接的な検出には至らなかった。一方で、水素原子では十分観測できるシュタルク効果が生じることが理論計算から分かり、実験では光学的に薄い場合でも飽和吸収スペクトルが得られたので、第3年度では水素プラズマでシュタルク効果を確認し、電界計測を実現する。
|
今後の研究の推進方策 |
水素原子のバルマーα線は理論計算で十分観測可能なシュタルク効果が得られることが分かっており、光学的に薄い場合にも吸収スペクトルが得られる波長変調法と飽和吸収分光法の併用で飽和スペクトルが得られている。電界の効果が検出できなかったのは水素原子密度を上げるため比較的プラズマ密度が高く、電圧印加により生じたシースが薄く、測定系の空間分解能が不十分だったと思われる。したがって、プラズマ中の光路延長で低密度の水素プラズマを測定可能にして厚いシースが生成できる条件でシース中の電界の空間分布計測を行い、パルス電圧印加による過渡的シースの電界計測を試みる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
半導体レーザーの整備に昨年度の未使用額程度を充てる予定であったがそれより低額で済んだこと、光学部品、真空部品の損耗が少なく購入額が予想より少なくすんだことによる。 光学系の整備および成果発表のための旅費の一部に充てる予定である。
|