研究課題/領域番号 |
24540533
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
龍野 智哉 電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (60313011)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プラズマ物理 / 高速計算 / グラフィックスプロセッサ |
研究実績の概要 |
磁気回転不安定性の元となる、剪断流のある平衡について考察を行った。銀河などの降着円盤は、ケプラー回転(回転角速度の逆数が半径の3/2乗に比例)することで中心天体の重力とつり合い、定常的に回っていると考えられる。そういった力学的平衡の流体的な表現は古くから知られており、Navier-Stokes 方程式の定常解となっているが、運動論による記述を用いる場合、Vlasov 方程式の定常解としてケプラー回転する平衡を見つけるのは容易ではない。一般的な楕円軌道を含む運動論平衡を作ることは困難であるが、構成粒子がほぼ円軌道を取ると仮定して、近似的にケプラー回転を示す解析解を求めることに成功した。 さらに時間発展を記述する Vlasov 方程式を、上で述べた仮定を用いて簡約化した。運動論方程式を大域的にシミュレーションするには、グラフィックスプロセッサ (GPU) を用いたとしても現在のコンピュータでは性能が足りないため、何らかの仮定をおく必要がある。本研究では、粒子軌道が円軌道から大きく外れないと仮定し、降着円盤の一部を切り取ることとした。平衡軌道のまわりを回転しながら、差動回転によって変形する局所的なデカルト座標を考え、その座標系での Vlasov 方程式を導出した。電場や磁場についても、相対性理論の小速度極限としての Galilei 変換性を満たすよう変換することで、理論的に整合するものが導けた。 開発中の数値コードについて、プロファイリングツール nvprof を用いて解析をおこなった。グラフィックスボードではメモリの割当と開放に CPU よりも時間がかかることがあり、従来のコードのボトルネックとなっていることがわかった。メモリの割当を最適化することで、約6倍の高速化が実現できた。 これらの研究成果をまとめ、米国物理学会でポスター発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の計画よりも問題が難しいことが分かった。様々な物理的モデリングについてはようやく決着したので、数値コードの開発に取り組んでいるところである。
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今後の研究の推進方策 |
現在速度空間の離散化手法について検討しているところである。これが終わり次第数値コードを完成させ、早急にシミュレーションを始められるようにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
数値コードの開発が遅れているため、学会発表や論文出版などの経費を期限内に使いきれなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
学会参加、論文出版費用などに使用する予定である。
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