研究課題/領域番号 |
24540534
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
伊藤 弘昭 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (70302445)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | パルス重イオンビーム / 両極性パルス加速器 / パルスイオン注入 / パルスパワー技術 |
研究概要 |
高融点半導体材料に対してイオン注入と同時にアニール処理を行えるパルスイオン注入の実証実験を行うために、半導体ドーパントとなるイオン種のイオンビーム発生技術の開発が必要である。このため、これまで開発してきたパルス重イオンビームの純度をさらに向上させる必要があり、パルスパワー技術を利用した新しい加速器技術である両極性パルス加速器技術の開発を行った。両極性パルス加速器の原理は2段の静電加速であり、この多段加速を行うことでイオンの質量差で生じる速度差を利用することで、特定のイオン種のみを選択的に加速させることができる。そのため、不純物イオンが除去され、ビーム純度を向上させることができる。今年度は、両極性パルス加速器で発生したパルスイオンビームの特性評価を中心に行った。 両極性パルス加速器は接地された陽極、ドリフト管、接地された陰極、磁気絶縁加速ギャップから構成されており、ドリフト管は両極性パルス電源に接続されている。イオン源には窒素ガスパフプラズマガンを用いた。両極性パルス電圧をドリフト管に印加したとき、イオン電流密度~70 A/cm2、パルス幅~50 nsというパルスイオンビームを得ることができた。飛程時間差法や磁界偏向型エネルギー分析器を用いてイオン種、エネルギーを評価した結果、特定のイオン種(窒素イオン)が発生していることががわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炭化ケイ素半導体材料のn型ドーパント用の窒素イオンビーム発生技術、すなわち高純度化技術である新しい加速技術である両極性パルス加速器の検証実験を行い、パルスイオンビームの特性を評価し、高強度のパルス窒素イオンビームを確認することができた。また、パルスイオンビームによる照射効果も確認することができた。しかし、パルスイオン注入の実験に使用するにはまだ改良すべき点がある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降、パルスイオン注入の実証実験に向けて、確立したp型・n型ドーパント用のイオンビーム発生技術に対しては、ビーム純度向上のため装置の真空度改善など装置の改良を行っていく必要があり、パルスイオンビームの特性評価を引き続き行い、パルスイオンビーム技術の実用化に向けて実験を行っていく計画である。さらに、これらのビーム発生技術を用いたパルスイオン注入法の基礎実験に取り組むための実験装置の整備を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
パルスイオンビーム発生装置は、電源装置、加速器本体、計測装置を含めて当研究グループで開発してきたものであり、実験装置の維持、および実験を行うため必要な消耗品である高電圧用コンデンサ、高電圧用抵抗などの高電圧関連の電気回路部品や絶縁ガス・絶縁油、ビーム計測のためのイオン検出器の購入を次年度にしたためである。また、イオンビーム発生装置と照射用真空容器を接続する真空部品等を購入するとともに、ビーム照射実験に使用するターゲット材料としてシリコンウエハーや炭化ケイ素等の半導体材料などに使用する予定である。
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