研究課題/領域番号 |
24540537
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
時田 茂樹 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 講師 (20456825)
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キーワード | レーザープラズマ / テラヘルツ / サブミリ波 / 超高速 / 高強度レーザー / レーザー加速 / 電子ビーム |
研究概要 |
高強度超短パルスレーザーを固体へ照射した際に生じるレーザーと高密度プラズマとの相互作用は、現代のプラズマ物理分野の主要な研究課題の一つになっており、各国の物理・工学系研究施設で実験的・理論的研究が進められている。我々は2010年頃に、レーザー加速した電子ビームを磁気パルス圧縮器により時間的に圧縮する超短パルス電子ビーム発生法を完成させ、パルス幅約500fsの超短パルス電子ビームを得ることに成功している。この独創技術をーザーと高密度プラズマとの相互作用の超高速現象観測へ世界に先駆けて応用し、実験プラズマ物理の新たな可能性を拓くことが本研究の目的である。 昨年までに、高強度レーザーを照射した金属ワイヤー近傍にフェムト秒電子ビームを通過させ、電子ビームの偏向角をポンプ・プローブ計測することにより、ワイヤー表面に生じた電場および磁場を定量的に測定する新しい手法を開発・実証した。その結果、高強度レーザー照射直後に、ワイヤーに沿ってほぼ光速で伝播する非常に高強度な短パルス電磁波が発生することを新たに発見した。本実験結果はレーザー光のエネルギーが非常に効率よくサブミリ波領域の表面電磁波へと変換できることを示唆しており、学術と応用の両面において重要な知見となると考えられる。しかし、この現象に関する理論的な裏付けが不十分であった。 本年度は、時間領域差分法(FDTD法)による数値シミュレーションを行うとともに、ワイヤー端からの反射波の計測を行うことにより、理論と実験の双方で表面電磁波の発生を裏付けた。この研究成果は、学術の面において高強度レーザーと固体との相互作用に関する新しい知見を与えるとともに、応用の面において変換効率の改善やパルス波形の制御の可能性を示唆すものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では主として実験的研究を進める予定であったが、新しく発見した現象の理解を先行させる必要が生じたため、数値シミュレーションによる理論的研究を優先させた。実験に遅れが生じているものの現象の理解は進み、概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の数値シミュレーション研究により、レーザー光のエネルギーがサブミリ波(テラヘルツ波)領域の表面電磁波へと変換されるメカニズムが明らかとなった。特に近年、高強度テラヘルツ波の研究が盛んに行われており、注目度が高いことから、新しいテラヘルツ発生法として今回の研究成果を基にした新手法を確立することが急務であると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験研究を行う予定であったが、数値シミュレーション研究を先行させたため、実験用の物品の購入が遅れている。 次年度にレーザープラズマ誘起表面電磁波の詳細なデータを取得するための実験を予定しており、これに必要な物品を適宜購入する。
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