研究課題
基盤研究(C)
大阪大学レーザーエネルギー学研究センターの高出力レーザー,激光XII号を用いて弾丸の加速および標的への衝突実験を行い,発生するX線の計測を行った.弾丸加速方式.レーザーを弾丸飛翔体に照射すると表面が蒸発する.発生したプラズマ蒸気にレーザーの後半が吸収され非常に高温高密度のプラズマとなる.これが膨張する反作用として弾丸が加速される.この方式により,これまでに,アルミニウム・ガラス・金・ダイヤモンド粒子が秒速10km以上に加速されている.今年度はこの方式を使って飛翔体(衝突体)としてアルミニウム弾丸(直径80~250ミクロン)を秒速10-50 kmに加速した.標的.かんらん岩や玄武岩などの岩石標的を用いて衝突実験を行った.計測と結果.光量不足が懸念されるため,まずはレーザーエネルギー学研究センターに既存の時間積分型のX線ピンホールカメラを使った.カメラは,弾丸の飛翔方向に対して垂直な方向から標的表面上の弾丸が衝突する付近を観測するように設置した.その結果.衝突点付近からのX線の発光を捉えることに成功した.今後.衝突によるX線のエネルギーの絶対値を算出するために,金に対するレーザー照射・X線強度の計測を較正実験として行う予定である.さらに,衝突速度や標的,衝突角度(今回は垂直衝突のみ)を系統的に変えて実験を行い,X線の強度や弾丸の運動エネルギーに対する比がどのように変化するのかを調べる予定である.
2: おおむね順調に進展している
本研究の第一の課題であった「超高速度衝突によって発生するX線が観測できるのか」について,これまでの実験で発光が確認されており,これは当初の予定どおりである.次年度以降も定量的な解析のための実験,パラメータを変えた実験,更に応用へと計画通りに進めていく予定である.
今後は,衝突によるX線のエネルギーの絶対値を算出するために,金に対するレーザー照射・X線強度の計測を較正実験として行う予定である.金のレーザー照射プラズマから発生する制動輻射X線の強度は理論的に計算できるので,相対的に衝突によって発生するX線強度も推定できる.さらに,衝突条件(速度,弾丸サイズと材質,標的材質)を系統的に変えて実験を行い,データを取得する.発生するX線のエネルギー(および弾丸運動エネルギーからの変換率)がどのように依存しているのかを調べる.結果を基にして,衝突が月面で起こった場合に地球上空での単位面積あたりの光子数を算出し,X線天文衛星での観測が可能か検討する.また,地球で起こったとされている後期隕石重爆撃が系外惑星でも起こっていると仮定し,隕石が衝突する際に発生するX線の総量を見積り,地球上空での単位面積・時間での光子数を算出する.
次年度はピンホールカメラ用の鏡筒やベリリウムフィルターなどの購入に充てる.さらに,衝突条件を変えて実験を行う場合,弾丸速度はレーザーのエネルギーによって調整可能であり,標的物質の変更は容易である.しかしながら,岩石どうしの衝突を行うためには岩石弾丸を用意する必要があるが,100ミクロンサイズの岩石球を製作するのは容易ではない.そこで微小サイズ粒子の繰り返し衝突によって球状の岩石粒子の製作を考えており,そのために粉砕装置(ミル)を購入する予定である.
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