研究課題/領域番号 |
24540543
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
田口 俊弘 摂南大学, 理工学部, 教授 (90171595)
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研究分担者 |
井上 雅彦 摂南大学, 理工学部, 教授 (60191889)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | レーザープラズマ / 自己組織化表面構造 / 放射プラズマセル / 放射光 |
研究概要 |
シミュレーションコード開発においては,中性固体を模擬するために,束縛電子の効果を含めた粒子コード(PICコード)の開発を行った.通常,束縛電子の振動数はプラズマ振動数やレーザーの振動数よりかなり高いため,陽解法で解くには時間ステップが非常に短くなる.しかし,束縛電子の効果の導入には電子の振動中心の時間的変動が計算できればいいので,束縛電子の振動のみ陰解法で時間発展させ,レーザー強度が十分高くなれば,これを電離させて自由電子として取り扱えるようにコードを改良した.この結果,レーザーが透明媒質を侵入する場合の屈折率の効果をPICコードに導入することができた.そこで,これを用いて周期的に配置されたカーボンナノチューブ(CNT)に高強度レーザーを照射したときの挙動を解析した. 周期構造を持った自己組織化膜形成実験においては,まず周期的ハニカム膜の生成条件を調べるために,ガラス基板に高分子溶液を塗布し,色々な条件下での微小水滴の結露の実験を行った.単に加湿空気を吹きかける実験では空孔ができなかったが,高湿度下で加湿空気を吹きかける実験を行った結果,広範囲に空孔ができるようになった.しかし水滴の凝集が生じ,空孔サイズに大きなばらつきが生じてしまった.金を蒸着したガラス基板に変更して高湿度下で乾燥空気を送る実験を行った結果,空孔が規則的に配列した膜の作製に成功した.シリコン基板に高分子膜を成膜し,オスミウムコーターで触媒金属のひとつであるオスミウムを蒸着し,クロロホルムで高分子膜を除去してからCNTの成膜実験を行った.成膜したシリコン基板をSEM観察すると,元素マッピングにより空孔部分に炭素が集まっていることがわかった.従ってこの研究により,自己組織化膜の空孔部分に金属触媒を配置することに成功し,その金属触媒部分のみにCNT膜を形成することに成功したと言える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
束縛電子の効果をPICコードに導入することには成功した.今年度は,この改良したコードを用いて周期的なカーボンナノチューブの解析を行い,結果の一例を学会で報告した.よって,シミュレーションコードの開発状況はほぼ予定通りに進んでいる.ただ,CNT成長実験がまだ不完全なため,利用可能なパラメータの設定ができず,予定しているレーザー照射実験に対応した計算を実行することはできなかった. 自己組織化構造膜を用いた周期的配置のカーボナノチューブ生成実験については,CNTを成長させるための触媒金属の周期的配置が鍵である.今年度は,これについてある程度まで周期的に配置させることができ,この触媒上にCNTを成長させるところまでは成功した.しかし,触媒金属の空孔自体のサイズや周期性の制御がまだ完全ではなく,最適な実験パラメータを得るには至らなかった.
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今後の研究の推進方策 |
まず,並列コンピュータの能力を増強する.CPUの数を増加させ,メモリ量も増やして,より大規模なシミュレーションの実行が可能なようにする.その上で,単にCNTを並べただけのターゲットではなく,放射プラズマセルを形成するための壁を含めた構造を持つターゲットへのレーザー照射解析を行う.これにより,我々の期待する放射光の強度,波長選択性,指向性などを調べる. 自己組織化構造膜の作製実験においては,高分子膜上に均一なサイズの微小水滴を結露させる温度および湿度の条件を系統的に調べ,膜の構造を再現性よく制御するためのノウハウを確立する.これにより,レーザー照射実験を行うための準備をする.
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次年度の研究費の使用計画 |
大規模シミュレーションコードを実行するために,CPUの購入,メモリの購入などを行う. 実験設備としては,自己組織化高分子膜の作製条件を精密に制御するための温度・湿度の制御回路や実験装置の製作,テラヘルツ波検出回路の製作,レーザ照射実験にかかる費用などに使用する. 加えて,国際学会への参加や国内外の共同研究を遂行するための旅費にも使用する.
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