研究課題/領域番号 |
24540544
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
吉村 信次 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (50311204)
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研究分担者 |
寺坂 健一郎 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (50597127)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 間欠性 / ECRプラズマ / 電子流束 / 浮遊電位揺動 / 統計解析 / 2次元計測 |
研究概要 |
本研究は,電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマ中に自発的に発生する間欠的な高エネルギー電子流束を対象として,統計的手法と電気的・光学的2 次元計測を駆使することによって,その時空間構造を解明することを目的としている.今年度は多電極格子状プローブ(High-Impedance Wire Grid:HIWG)を用いた2次元浮遊電位揺動計測を行い,間欠的電子流束の発生間隔,持続時間,発生位置について調べた.10万回以上のイベントについて統計的解析を行った結果,発生間隔の確率密度関数(Probability Density Function:PDF)は指数分布をしており,一定生起確率のポアソン過程であることがわかった.持続時間のPDFは長時間側で-5乗程度のべき分布をしている.発生位置はプラズマ断面上でランダムであり,直前の発生位置に依らない.また,持続時間の平均値のガス種依存性をHe,Ne,Ar,Xeプラズマを用いて調べたところ,原子質量の平方根に比例していることがわかった.この結果は,本現象には,電子のみでなく重たい粒子(イオンまたは中性粒子)のダイナミクスが深く関与していることを示唆している.次に,バンドパス干渉フィルター付きICCDカメラを用いた2次元発光分光計測を行った.Ne中性粒子からの585.2nmの自然発光をプローブの浮遊電位揺動をトリガーとして撮影したところ,プローブ周囲に直径40mm程度の円形の強く発光する領域が観測された.この結果は,間欠的電子流束の増加に伴う電子エネルギーの増加を反映していると考えられる.発光分布から評価した電子流束の空間サイズはHIWGを用いた計測結果と良い一致を示している.また,トリガーディレイを変化させることで,電子流束の時間発展を計測することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は「多電極プローブによる浮遊電位計測と時系列解析」および「分光学的手法による高エネルギー電子流束の空間分布および発生位置の評価」を2本の柱として計画していた.前者については,計16本の独立した電極からなるHigh-Impedance Wire Grid(HIWG)を開発し浮遊電位揺動を計測することで,電子流束の空間サイズ・発生位置を明らかにした.また,計測した時系列を統計的手法を用いて解析することで,発生間隔の確率密度関数が指数分布をしていることがわかった.一見ランダムな現象の背後にある数学的構造を見出せたと考えている.後者については,干渉フィルター付きICCDカメラを用いた発光分光計測を実施し,間欠的な現象のスナップショットを撮ることに成功した.発光強度の増加によって,間欠的電子流束を構成する高エネルギー電子の存在を示せた.また、この成果は,次年度以降に計画している「導電性ガラスとグリッドを組み合わせた電子エネルギー分析器の製作」へ向けた第一段階として評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は「導電性蛍光ガラスとグリッドを組み合わせた電子エネルギー分析器の製作」を計画している.これまで行った実験からは,1イベントの正確なエネルギーは決定できない.本研究で対象とする電子流束のように,強度が空間分布をもち,かつイベントごとにサイズや発生位置が異なる場合には,従来のファラデーカップを用いた方法では決定的な情報を得ることは困難である.そこで,位置とサイズの情報を取得しながら,エネルギー分析を行う必要がある.この要請を満たすために,導電性蛍光ガラスとグリッドを組み合わせたエネルギー分析器を製作する. 次に,製作した電子エネルギー分析器をHYPER-I装置内に設置し,光学計測用に加工した終端フランジからICCDカメラで計測する.電子流束がコレクタ内に完全に入ったイベントについて,それによる浮遊電位の変化とコレクタ電流値を記録することで,電子流束と浮遊電位変化の対応をつける.またエネルギー選択グリッドの印加電圧をショットごとに変化させることで,電子流束を構成する高エネルギー電子群の2次元エネルギー分布を決定する.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は,主として平成25年3月に行った国際会議での招待講演(ISS-2013)および日本物理学会発表のための旅費の支給が遅れたことによるもので,研究計画の大幅な変更によるものではない.また,残額の一部は導電性蛍光ガラスとグリッドを組み合わせたエネルギー分析器製作のための消耗品費として使用する.
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