研究課題
本研究は電子サイクロトロン共鳴(ECR)プラズマ中に自発的に発生する高エネルギーの電子流束を対象として,統計的手法と電気的・光学的2次元計測を駆使することによって,その時空間構造を解明することを目的としている.電気計測では,計16本の独立した電極から成るHigh-Impedance Wire Grid(HIWG)検出器を開発し,電子流束の空間サイズと発生位置を特定した.内径30cmのプラズマ中のランダムな位置に直径3-4cm程度の高エネルギー領域が自発的に形成されることがわかった.また,計測された浮遊電位揺動時系列の統計解析から,この現象が定常ポアソン過程として特徴づけられることを明らかにした.光学的計測では,干渉フィルター付きICCDカメラを用いて,電子流束の2次元空間分布の時間発展を観測することに成功した.ラングミュアプローブを用いた浮遊電位計測と組み合わせて条件付き平均化法を用いることで,電子流束のエネルギーと励起原子からの発光強度に良い相関があることがわかった.この現象は当初ヘリウムプラズマで発見されたが,その後の研究で,ネオン,アルゴン,キセノンのECR放電中でも発生することが確認された.各プラズマにおける浮遊電位時系列の統計解析によって,電子流束発生イベントの平均持続時間が放電ガス種の質量数の平方根に比例することが明らかとなった.この事実は,ECRプラズマ中の高エネルギー電子発生現象にイオン・中性粒子といった重たい粒子が関与していることを示唆している.本研究によってECRプラズマ中の間欠的電子流束発生現象について,その時空間構造と統計的性質を明らかにすることができた.これらの特徴を記述できる数理モデルの構築が今後の課題として残った.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
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