研究課題/領域番号 |
24540545
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研究機関 | 公益財団法人レーザー技術総合研究所 |
研究代表者 |
砂原 淳 公益財団法人レーザー技術総合研究所, 理論・シミュレーションチーム, 副主任研究員 (00370213)
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キーワード | レーザー核融合 / 高速点火 / 高速電子 / 高速イオン / 高強度磁場 / 数値シミュレーション |
研究概要 |
本研究は高速点火レーザー核融合において、効率的な高速電子発生の制御、並びに磁場による高速電子輸送制御の物理を探求することにより、高速点火において最も重要な課題である超高強度レーザーによる爆縮プラズマの加熱効率向上を目指すものである。 現在大阪大学を中心に推進している高速点火原理実証実験において、直接照射方式を考案し、概念設計を行った後、実験を実施した。考案したターゲットは従来のコーンターゲットの先端部に穴を空けたもので、超高強度レーザーが直接爆縮プラズマと相互作用する。これにより、超高強度レーザーと爆縮プラズマとの距離(=スタンドオフ距離)が短縮され、超高強度レーザーにより発生する高速電子の発散角による加熱率減少を抑制する事ができる。第2に、コーン先端部による高速電子の散乱がないため、高速電子の爆縮プラズマ方向への透過率を向上出来る。第3に、爆縮プラズマ(=CDプラズマ)と超高強度レーが直接相互作用することにより、高速イオンを発生し、この高速イオンで爆縮コアを加熱することが出来る。高速イオンは高速電子に比べて爆縮コア中での飛程が短く、爆縮プラズマをより局所的に高温にすることが出来る。これらの特徴を持った直接照射方式を考案し、一次元統合加熱コードを開発して、レーザー条件、ターゲット条件を変化させた際の加熱効率の評価を行った。その上で、実際の高速点火原理実証実験に持ち込み、従来の高速点火ターゲットとは異なり、爆縮プラズマへのイオン加熱の兆候を確認するなど、見積り通りの成果が得られつつ有る。また、磁場を用いた高速電子の収束による加熱効率の向上について、レーザー駆動高電流による磁場生成のモデリングとして、一巻きコイル中の電流分布を計算し、表皮効果の影響を解析した。これらの解析により、より高強度な磁場発生に向けた物理理解が深まりつつ有る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は高速点火ターゲット、特にコーンターゲットの物理特性、超高強度レーザーと物質の相互作用の物理理解に基づいて、加熱率向上のための条件最適化を行うものであり、3年間の研究期間の一年目でコーンターゲットの物理的特性を調べ、二年目で磁場による高速電子の収束についての物理を探求した上で、三年目に実際の実験で、加熱率の向上を確認することとなっている。実際の高速点火ターゲットにおける加熱率向上について、二年目で既に計画を前倒しして実験に持ち込み、成果を得ており、研究目的の達成度は高い。一方で、コーンターゲットの物理特性、状態方程式、磁場による高速電子の収束に関する一年目、二年目の研究について、現在まだ継続しており、さらなる探求が必要である。それ故、研究全体として目的は達成しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
考案した直接照射型高速点火ターゲットの物理特性、特に状態方程式と導電率の関係を中心に理解を進める。また、レーザー駆動高電流による磁場生成のモデリングを進める。現状の一次元加熱評価コードを改良し、導電率、磁場発生の物理を含むを統合加熱評価コードを開発し、高速点火実験の結果について解析を進める。これらを計画最終年度である今年度に進めることにより、研究目的である高速点火の加熱率向上を実証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ネバダ大リノ校との共同研究打ち合わせについて、米国物理学会出席に合わせて実施したため、関係する旅費を支出しなかった。 本年度、高速点火国際会議に合わせてネバダ大リノ校との共同研究打ち合わせを実施する。この国際会議及び共同研究打ち合わせに関する費用として、本年度支出する。
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