研究課題/領域番号 |
24540546
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
布村 正太 独立行政法人産業技術総合研究所, 太陽光発電工学研究センター, 主任研究員 (50415725)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | プラズマ / 太陽電池 / プラズマプロセス / アモルファスシリコン / 半導体 / 欠陥 / 光電流 / トラップキャリア |
研究概要 |
本研究では、プラズマプロセス下の薄膜半導体の半導体特性をその場評価する手法を開発し、薄膜半導体成長時の欠陥発生の実時間観測とその発生メカニズムを解明する。 本年度は、プラズマCVDプロセス下で適用可能な光電流測定法を開発し、薄膜シリコン成長時の光電流と半導体特性及び太陽電池デバイス特性との比較を行い、以下の成果を得た。 1)薄膜シリコン成長時の光伝導度をその場で実時間測定することに成功した。光伝導度は、初期成長時極めて低いが、膜成長と共に向上する結果を得た。本測定を通し、初期成長時に欠陥の多い低品質膜が成長することを明らかにした。 2)膜成長時に近赤外レーザーを照射することで、成長時の膜中トラップキャリアの検出に成功した。トラップキャリアの起源は、電子スピン共鳴法との比較検討より、ダングリングボンド欠陥に起因すると考えれられることを示した。 3)薄膜シリコン太陽電池のデバイス特性と発電層成長時の可視及び近赤外励起の光電流の相関を調べた。可視及び近赤外励起の光電流の比が、発電効率及び形状因子を予測する指標になることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書記載の通り、薄膜シリコンの半導体特性を成長時にその場評価する手法を開発することができており、研究はおおむね順調に進んでいる。 本年度第一四半期では、薄膜シリコン成長時の光伝導度をその場で実時間測定する手法を開発した。光伝導度の測定を通し、初期成長時に欠陥の多い低品質膜が成長することを明らかにした。 第二四半期では、膜成長時に近赤外レーザーを照射するセットアップを構築し、成長時の膜中トラップキャリアの検出を行なった。電子スピン共鳴法との比較検討等を通し、トラップキャリアが、ダングリングボンド欠陥に起因することを示した。 第三及び第4四半期では、薄膜シリコン太陽電池を作製し、そのデバイス特性と発電層成長時の可視及び近赤外の光電流比の相関を詳細に調べた。光電流比が、発電効率及び形状因子を予測する指標になること示した。本成果は特許出願しまとめられている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度開発済みの光電流比測定法を用い、薄膜シリコン成長時の膜質評価と欠陥形成機構の解明に関する研究を実施する。特に、薄膜シリコンの表面層、界面層、バルク層形成時の膜質の違いに着目し、各層形成時の膜質低下要因を究明する。 来年度は、高エネルギーイオン、紫外線、短寿命ラジカル及びクラスターが成長薄膜の膜特性に及ぼす効果を調べる。具体的には、表面層へのイオン衝撃の影響を調べることを目指し、測定基板上にパルスバイアスを印加し光電流や電流比の応答を調べる。バイアス電圧の増加による光電流の低下から、表面層へのダメージを評価することが可能と考えられる。紫外線照射の影響は、重水素ランプ等の光を測定基板に照射し、その時間応答を同様に測定することで表面及びバルク層に及ぼすダメージを評価可能である。短寿命ラジカルとクラスターの影響については、既に行われている手法であるが、リモートプラズマ方式を採用し、プラズマを基板から離すことで膜質の変化を調べる予定である。 再来年度は、膜質向上に向けた水素原子の役割を担を解明する実験を行なう。水素原子は成膜表面をパッシベーションし、各層の欠陥修復やSiネットワーク構造の再構築を促すと考えることができる。そのため、測定基板にフラッシュランプの光を照射し、Siネットワーク構造の再構築がもたらす光電流の変化を検出する。これらの実験を通し、各層の膜質低下要因の特定とその改善法を見出すと共に、実デバイスにおける特性向上に向けた指針を得る。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述の研究を実施する上で、以下の備品・及び消耗品の購入を予定している。 光電流計測用基板としてガラス基板(300枚)、分光エリプソメーターを用いた膜厚測定用に酸化膜付シリコン基板(100枚)、ESR等を用いた欠陥密度の評価に石英基板(50枚)を購入予定。 膜質低下要因を特定するために、重水素ランプ、フラッシュランプを購入予定。また、半導体レーザーやランプの出力校正用にパワーメータを購入予定。プラズマCVD装置電極改造費用。 研究成果の発信のため、国内外の学会への参加費用
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