研究課題/領域番号 |
24540546
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
布村 正太 独立行政法人産業技術総合研究所, 太陽光発電工学研究センター, 主任研究員 (50415725)
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キーワード | プラズマ / 半導体薄膜 / 欠陥 / キャリア輸送 / 光電流 / プラズマCVD / その場測定 / 実時間観測 |
研究概要 |
本研究では、プラズマプロセス下における薄膜シリコンの半導体特性を実時間評価し、薄膜成長時のキャリア輸送と欠陥形成メカニズムを明らかにすることを目標とする。 本年度は、昨年度開発したプラズマプロセス下に適用可能な光電流測定法を、様々なプロセス成長条件下の薄膜シリコンに適用し、以下の知見を得た。 1)薄膜成長時の光電流の時間発展から、プラズマCVDプロセス下の薄膜の表面近傍には欠陥量の多い表面欠陥層が形成されること明らかにした。表面欠陥層の厚みは約20nm以下である。また、表面欠陥層の下側に、欠陥量の少ないバルク層が形成され、本バルク層は成膜時間とともに厚くなることを示した。 2)薄膜成長時の薄膜シリコンのキャリア輸送特性は成長温度に強く依存し、最適な成長温度は200度±20度であることを見出した。 3)薄膜シリコンのキャリア輸送特性が、プラズマCVD後(ポストアニール時)に大幅に向上(改善)することを見出した。この輸送特性の改善は、成膜中に形成された欠陥の修復や構造緩和に起因していると考えられ、その活性化エネルギーは0.53eVであることを見出した。デバイス特性との比較を行い、本ポストアニールがデバイス特性を決定づける重要な役割を担っていることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に記載の通り、薄膜シリコン成長時のキャリア輸送特性の測定と欠陥量の空間分布の評価に成功しており、おおむね研究は順調に進んでいる。 本年度は、まず最初に、薄膜シリコン成長時の光学的特性の実時間評価に取り組んだ。光学定数(バンドギャップ、屈折率、消衰係数)の評価を行うため、分光エリプソメトリーの測定と解析を行った。薄膜成長時、膜厚は時間に比例して厚くなるが、各種光学定数はほぼ一定に保たれることを確認した。 その後、各種プロセス条件下で成長薄膜の光電流と分光エリプソメトリーの同時測定を行った。これらの実験を通し、薄膜シリコン成長時の表面欠陥層及びバルク層の存在を明らかにした。また、ポストアニーリング時のキャリアの輸送特性が大幅に向上することを見出した。本成果を学会にて発表するとともに論文としてまとめた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度得られた成果をもとに、薄膜シリコン成長時の欠陥形成メカニズムの解明と膜質の向上に取り組む。 具体的には、成長薄膜へのイオン照射、紫外線照射及び水素原子照射実験を行い、これらの処理に伴う欠陥量の増減をリアルタイムに評価する。特に、水素原子は成膜表面をパッシベーションし、各層の欠陥修復やSiネットワーク構造の再構築を促す役割を担うと考えられているので、水素原子供給量の最適化による良質な薄膜の作製を目指す。作製された膜を実デバイス(太陽電池) に適用し、特性向上を実証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初購入予定の物品が競争入札により安価に購入できたため、余剰分を次年度へ繰り越す。 予定通り研究を実施する。繰り越し分は、研究を加速させるための追加実験の費用に充てる。
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