本研究では、プラズマプロセス下における半導体薄膜の電気特性をその場で実時間評価する手法を開発し、薄膜成長時のキャリア輸送特性と欠陥形成のメカニズムを解明する研究を行った。以下に得られた成果を記述する。 1)プラズマプロセス下において、半導体薄膜の光電流をその場で実時間測定する手法を開発した。本手法を、太陽電池用途の薄膜シリコンの成長プロセスに適用し、成長表面に欠陥の多い表面欠陥層(20nm以下)が存在することを見いだした。キャリアの輸送特性はこの表面欠陥層によって律速され、特に、成長初期の極薄膜で輸送特性が極めて低く、膜成長(厚膜化)と共に輸送特性が改善することを明らかにした。また、成長直後の熱アニールにより、表面欠陥層は自己修復し、これに伴い輸送特性が大幅に向上することを見いだした。上述の熱アニール実験を異なる温度で行い、欠陥層の修復に要する活性化エネルギーが0.53eV程度になることを示した。 2)光学的ポンプ・プローブ法を用いて、プラズマプロセス下の半導体薄膜のトラップキャリア(トラップ電荷)を定量的に評価することに成功した。太陽電池用途の高品質な水素化アモルファスシリコンのトラップ電荷密度は、成長時に1e18cm-3程度であり、成長後に減少することを見いだした。また、薄膜の成長条件を変化させ、成膜温度が200度でトラップ密度が最小になること明らかにした。 3)薄膜シリコン太陽電池(単接合、pin構造)のデバイス特性とトラップ電荷密度との相関を詳細に調べた。トラップ電荷の増加に伴い発電効率が著しく低下することを検証した。発電効率の更なる向上には、トラップ密度を約1e17cm-3以下に低減し、キャリアの輸送特性を向上させる必要があることを示した。
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