研究課題/領域番号 |
24550004
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 信一郎 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10262601)
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研究分担者 |
木場 隆之 北海道大学, 情報科学研究科, PD研究員 (40567236)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | RIKES / 分子振動 / 制御 |
研究概要 |
フェムト秒レーザーパルスを用いたラマン誘起光カー効果(RIKES)分光法において、ポンプ光をダブルパルス化し分子振動周期と同期させることで、分子振動モードの量子制御をすることが可能であり、四塩化炭素溶液等について報告がなされている。本研究では、このダブルパルスRIKES量子制御法の応用範囲をひろげることを目的として共鳴効果を用いることを着想した。希薄溶液中の各種色素分子(シアニン色素系、ポルフィリン系、ペリレン等)や色素蛋白(ヘム蛋白等)の量子制御を実現することを目的とする。 24年度は単色ダブルパルス共鳴RIKES装置による、シアニン色素系の量子制御実験の実現を目指した。装置の時間分解能は約20fsである。この装置によって、非共鳴のダブルパルスRIKES実験は四塩化炭素やDMSO溶液等について成功した。しかしながら、シアニン系色素溶液についての共鳴RIKES測定ではいままでのところ良好なRIKES信号を得るに至っていない。共鳴実験においては更なる改良が必要であり、光学系の見直し(不要な散乱光の除去や、偏光子を消光比の高い高性能のものに変更する等)、光検出器系の検討(プリアンプの変更等)、熱レンズ効果対策としてサンプルを循環させるフローセルシステムの構築等をおこなった。RIKESシグナルの詳細な解析を目的として、縮約密度演算子法に基づいたマスター方程式(Redfield方程式)に非弾性散乱項を含めた理論考察をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
24年度計画の研究目的の達成度としては60%程度である。 理由としては8fsレーザー光源の不調(不要サイドバンドの発生等)と、人的不足(レーザー実験の補助ができる大学院生がいないこと)があげられる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) チタンサファイアレーザーの基本発振波長である800nm付近に吸収帯をもつシアニン色素系で、共鳴RIKESの報告例のあるHITCI色素のダブルパルス共鳴RIKES実験を成功させることを第一の目標とする。報告されている(Y. Kai et al., J. Luminescence 66/67, 370-374(1996))RIKES実験の測定時間分解能(~100fs)ではHITCIの分子内振動由来の信号は見出されていないが、我々のRIKES 装置の時間分解能(~20fs)では分子内振動モードが観測されることを期待している。HITCI以外の一連のシアニン系色素についてもダブルパルス共鳴RIKES実験をおこなう。 (2) ポンプ光とプローブ光が同一波長である単色の共鳴RIKES法では、ポンプ光による熱レンズ効果が深刻である。ポンプ光を非共鳴としプローブ光のみ共鳴するような、ポンプ光とプローブ光の波長が異なる二色共鳴RIKES法では熱レンズ問題は緩和される。このような二色共鳴RIKESはβーカロテンについての報告例(P. Foggi et al., Opt. Lett. 17, 775-777 (1996))がある。本計画ではポンプ光を800nm、プローブ光を400nmとする二色共鳴RIKES装置を開発し、400nm近辺に吸収帯を持つポルフィリンやペリレン色素分子につてのダブルパルス共鳴RIKES実験を成功させることを目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度未使用額は8fsレーザーシステムに部品として組み込まれているダイオードレーザー(160万円)の交換に備えて、光学部品等の消耗品額を節約したために発生した。 25年度はダイオードレーザーの調子を監視しつつ 8fsレーザーの光学調整費。分散補償ミラーの交換等に用いる予定である。
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