研究概要 |
近年、化学反応のコヒーレント制御(M. Dantus et al., Chem. Rev. 104, 1813 (2004))や、分子の電子・振動状態を量子ビットとして用いた量子コンピューティング(Y. Ohtsuki, Chem. Phys. Lett. 404, 126 (2005))など、超短レーザーパルスを用いて原子・分子の波動関数を直接制御しようとする試みがなされている。これらの量子制御を実現するにあたって、原子分子の波動関数がどれだけ長い間コヒーレンス(可干渉性)を保持できるかが重要となる。したがって、コヒーレンスが失われてゆく過程(デコヒーレンス(位相緩和))のダイナミクスの解明、さらにはその抑制が必要とされている。しかし気相に比べて凝縮系でのコヒーレント制御に関する実験的な研究はまだ数少ない。これは、凝縮系においては外界からの相互作用が多様であり、高速でデコヒーレンスが起こることが原因となっている。凝縮系でのデコヒーレンスメカニズムを明らかにする一環として、二硫化炭素とアルコールの二成分溶液系のRIKES測定をおこなった。二硫化炭素とアルカンの二成分溶液のRIKES信号については、過去に報告(Scondinu et al, J. Phys. Chem. B 107, 44 (2002))があり、アルカン中に生成される二硫化炭素二量体のlibration運動と関連つけた議論がなされている。今回の我々の研究ではアルコールのヒドロキシル基の運動がRIKES信号にもたらす影響について検討した。
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