研究課題/領域番号 |
24550004
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 信一郎 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10262601)
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研究分担者 |
木場 隆之 北海道大学, 情報科学研究科, その他 (40567236) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脱位相抑制 / 量子制御 / シクロデキストリン / 分子動力学 / 高分子 / 熱運動 / 量子化学 |
研究実績の概要 |
近年、化学反応のコヒーレント制御など、超短レーザーパルスを用いて原子・分子の波動関数を直接制御しようとする試みがなされている。これらの量子制御を実現するにあたって、原子分子の波動関数がどれだけ長い間コヒーレンス(可干渉性)を保持できるかが重要となる。したがって、コヒーレンスが失われてゆく過程(デコヒーレンス(位相緩和))のダイナミクスの解明、さらにはその抑制が必要とされている。しかし気相に比べて凝縮系でのコヒーレント制御に関する実験的な研究はまだ数少ない。 我々はこれまでに光学位相制御されたフェムト秒ダブルパルス励起による波束干渉法を開発してきた。この量子干渉測定システムを用いて、常温溶液中のペリレンなどに対して分子の電子状態のデコヒーレンス過程の観測に成功している。これらの観測結果より、溶液中での多原子分子のデコヒーレンスは非常に速く(数10 fs)、波動関数の量子制御のためにはデコヒーレンス時間の長い分子系の構築が必要であることが明らかとなった。そのための方策として「シクロデキストリン包接に電子位相緩和時間の抑制法の開発等に取り組むと同時に、電子状態と比較して位相緩和時間の長い分子振動の量子制御法の開発もおこなってきた。 フェムト秒ラマン誘起光カー効果(RIKES)分光法において、ポンプ光をダブルパルス化し分子振動周期と同期させることで、分子振動モードの量子制御をすることが可能であり、四塩化炭素溶液等について報告がなされている。本研究では、このダブルパルスRIKES量子制御法の応用範囲をひろげることを目的として共鳴効果を用いることを着想した。希薄溶液中の各種色素分子(シアニン色素系、ポルフィリン系、ペリレン等)や色素蛋白(ヘム蛋白等)の量子制御を実現することを目的とした。 しかし研究代表者の研究環境の変化等の諸般の事情により研究内容を理論的研究へとシフトさせた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の研究環境の変化(所属研究室の異動等)により実験的研究の遂行が困難になり、理論・計算化学研究(本研究課題の研究背景である凝縮相での電子位相緩和の抑制環境の探索)に移行したため。分子動力学計算環境を整え(GPUワークステーションの導入等)、AMBER運用のノウハウの蓄積を主としておこなった。
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今後の研究の推進方策 |
電子位相緩和の見積もりをするための計算化学環境の整備が整い、古典力学的なMD計算のノウハウも十分蓄積した。次の段階としてQMMD(量子ー古典の複合MD)について、ノウハウを蓄積し、溶質溶媒相互作用による電子エネルギーのゆらぎを計算化学により見積もる方向で研究をおこなう予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
QMMD計算による電子位相緩和のシミュレーションを完遂させるため
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次年度使用額の使用計画 |
上記研究成果の国際学会での発表等
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