研究課題/領域番号 |
24550005
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
島崎 智実 独立行政法人理化学研究所, 計算科学研究機構, 研究員 (40551544)
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キーワード | 水素量子効果 / 核量子効果 / 第一原理計算 / ab-initio / 量子化学 / 密度汎関数理論 / DFT |
研究概要 |
近年、密度汎関数理論(DFT)およびコンピュータの発達により、第一原理(ab-initio)法に基づいたコンピュータ解析が化学分野だけでなく、物理学や材料学などの多様な分野で使用されるようになっている。本研究では、現在のスタンダードなDFT理論では取り扱われていない、分子やマテリアル中に含まれている水素原子(プロトン)の量子効果に注目して研究を行う。本研究では、水素の量子効果と周期境界条件を含む量子化学計算および第一原理を融合させることを目標としているが、本年度は量子化学のフレームワークで周期境界条件を扱うための新規な理論 (Range-separation density-fitting approach) およびプログラムの開発を行い、その結果に基づいて論文発表を行った( T. Shimazaki et al. J. Phys. Soc. Jan., 83, 054702, 2013)。また、平面波ベースの第一原理計算プログラムQ-MASに水素の量子効果を考慮するためのルーチンを組み込み、水分子に対して水素の量子効果の影響がどのようになるかを調べた。結果は、Gauss基底を用いた量子化学計算と同様のものになり、平面波を用いたとしても開発した水素の量子効果の理論は妥当な結果を与えることを確認した。また、本研究プロジェクトは、開発したプログラムを公開する等により、研究成果を幅広く活用できる環境を構築することも目標としている。この目標のために、開発したきた水素の量子効果を含む量子化学プログラムをMITライセンスのもとにインターネット上で公開した(http://bitbucket.org/tshima)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本プロジェクトでは、開発した理論を幅広く適用するために、様々な第一原理計算プログラムに導入し、科学的・工学的に興味深い系への適用を目指している。また、開発したプログラムを幅広く公開する等によって、研究成果をさまざまな分野に取り込むための基盤を整備することを目標としている。このような目的のために、本年度では開発したプロググラムをMITライセンスのもとにインターネット上に公開した。プログラムの改良・再配布等に関してMITライセンスは非常に自由度の高いライセンス形態であり、このようなライセンスで公開されている量子化学プログラムは国内には少なく、この点でもプロジェクトの目的を達するために大きな前進がなされたと考えている。また、ガウス基底だけでなく、平面波プログラム(Q-MAS)にも水素の量子効果の理論を組み込み、理論が適切に働くことを確認した。この点に関しても、プロジェクトは順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、開発している周期境界条件を考慮できる第一原理計算プログラムに水素の量子効果の理論を組み込むことを第一の目標とする。また、可能であれば周期境界条件のもとで量子化学計算を可能とするプログラムをMITやBSDといった非常に自由度の高いライセンスのもとで公開することを目指す。公開には、プログラムのリファクタリングや論文発表といったいくつかのハードルが存在するが、可能であればプロジェクト期間中に公開したいと考えている。プログラムを公開することによって本研究プロジェクトの成果が幅広く活用するための基盤となることが期待される。 また、今後は、理化学研究所・計算科学研究機構の川島研究員や、産業技術総合研究所の石橋研究員ら共に開発したプログラムを用いて興味ある系に関して適用計算を積み上げることにより、本プロジェクトの価値を向上させることを目標にして研究をおこなうことを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
本プロジェクトの途中で研究代表者が異動となり、予算使用に若干の修正を余儀なくされたが(特に1年目)、本年度ではほぼ計画通りに予算の執行が行えたと考えている。しかし、学会発表・論文発表に関しては当初の予定より若干少なかったためであるが、次年度では研究成果を積極的に発表していくことを計画している。よって、予算の執行状況に特段の問題はないと考えている。 次年度では、これまでの研究成果を学会発表や、論文発表で広く公開していくことを予定している。特に海外の学会での発表はこれまであまり行ってきていないため、可能な限り海外の学会で発表する場を設けることを計画している。
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