研究課題/領域番号 |
24550006
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田村 宏之 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (60390655)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 有機薄膜太陽電池 / 第一原理計算 / 量子ダイナミックス |
研究概要 |
有機薄膜太陽電池は製造コストが低く軽量で柔軟性を活かした用途もあり次世代太陽電池として有望であるが、シリコン太陽電池と比べ光電変換効率が低く高効率化が課題となっている。光吸収による励起子の生成から電荷分離を経てキャリアが電極に取り出されるまでのダイナミックスは光電変換を支配する本質だが、内部のメカニズムは不明な点が多い。 本研究では、最先端の第一原理計算や量子動力学法等の理論計算を駆使して、有機導体の自己組織化で形成される相互貫入型ドナー-アクセプター界面での光電変換機構を解明する。化学修飾によるパッキング構造や界面構造の変化が、光吸収特性、励起子拡散長、電荷分離、キャリア生成、キャリア伝導に与える影響を解明し、光電変換効率を高めるための分子材料設計の指針を見出す。 本年度はドナー-アクセプター界面のモデル系として、オリゴチオフェン-フラーレン系を考慮し、励起子の電荷分離機構を第一原理計算と量子ダイナミックス法で解析し、以下の論文を発表した。 “Quantum dynamics of ultrafast charge transfer at an oligothiophene-fullerene heterojunction" Tamura et al. J. Chem. Phys. 137, 22A540-1-8 (2012). コヒーレントな電子移動の重要性、電荷分離に伴う分子間配置の緩和の影響等を明らかにした。 また、フリーキャリアの生成機構を解明するため、界面のクーロンポテンシャルの予備計算を行い、ダイナミックスの解析の基礎を固めた(投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、オリゴチオフェン-フラーレン系の励起子の電荷分離機構を第一原理計算と量子ダイナミックス法で解析し、以下の論文を発表した。“Quantum dynamics of ultrafast charge transfer at an oligothiophene-fullerene heterojunction" Tamura et al. J. Chem. Phys. 137, 22A540-1-8 (2012). コヒーレントな電子移動の重要性、電荷分離に伴う分子間配置の緩和の影響等を明らかにした。この論文はJ. Chem. Phys.の’Resaech Hightlight’にも選出されており、正当な評価を得ている。 また、フラーレン会合体中の電子移動における電荷の非局在化の重要性を明らかにしている“Role of Intermolecular Charge Delocalization on Electron Transport in Fullerene Aggregates”Tamura et al. Phys. Rev. B 85, 054301-1-8 (2012). また、フリーキャリアの生成機構を解明するため、界面のクーロンポテンシャルの予備計算を行い、ダイナミックスの解析の基礎を固めた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、有機薄膜太陽電池のドナー-アクセプター界面での電荷分離機構を理論解析する。今年度は特に、界面に局在した電荷分離状態からフリーキャリアが生成する過程を理論解析する。界面の電子-正孔クーロンポテンシャルに打ち勝ってフリーキャリアが生成するメカニズムを解明する。このため、第一原理的な相互作用解析、ポテンシャル解析に基づいて、量子ダイナミックス計算を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
計算機資源の拡充のためPCサーバを購入する。
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