研究課題/領域番号 |
24550006
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
田村 宏之 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (60390655)
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キーワード | 有機薄膜太陽電池 / 励起子 / 量子化学 / 量子動力学 |
研究概要 |
有機薄膜太陽電池はシリコン太陽電池と比較して製造時の電力消費が少ないためエネルギーペイバックタイムの短い太陽電池として期待されている。だが、現時点のエネルギー変換効率はシリコン太陽電池の半分程度(10%)であり、さらなる効率向上が課題となっている。有機薄膜太陽電池の光電変換は、光吸収、励起子のドナーアクセプター界面への拡散、電荷分離、フリーキャリアの生成、電子・正孔の電極への輸送、電荷の捕集から成る。フリーキャリアの生成と電荷再結合との競合は太陽電池の内部量子効率を左右する重要な過程である。有機半導体は誘電率が低いため、静電引力が電子・正孔対を界面にトラップさせる傾向がある(CT状態)。このため静電引力に打ち勝ってフリーキャリアが生成する要因が議論の的となっている。本研究ではこのような光電変換機構を解明するため、量子化学計算と量子動力学計算を組み合わせた理論解析を行った[J. Am. Chem. Soc. (2013)]。光生成した励起子がCT状態を経てフリーキャリアへ解離するまでを理論解析し、超高速のキャリア生成に必要な条件を解明した。界面のドナー分子の有効π共役長が長くフラーレンの結晶性が高いとき、電子・正孔の非局在化により静電障壁が下がり、効率的にフリーキャリアが生成することが分かった。また、電荷分離の余剰エネルギーが緩和する前に振動励起CT状態からフリーキャリアが生成する“ホット励起子機構”を明らかにした。本研究で得られた知見は、有機薄膜太陽電池の効率向上の指導原理につながる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた、ポリマー/フラーレン界面での電荷生成機構の理論的解明に成功した。この成果を論文発表し、また広報のためのプレスリリースを行い新聞等に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究をさらに発展させ有機薄膜太陽電池の光電変換機構を深く理解する。また、相互貫入型有機太陽電池のような新しい構造に関する理論解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品購入費が当初予定より減ったため 出張旅費等に使用する
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