研究課題/領域番号 |
24550007
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
住吉 吉英 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50291331)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ホモキラリティ / コヒーレント相互作用 / マイクロ波共振器 / 自由誘導減衰信号 |
研究概要 |
平成24年度は、キラル分子の純回転遷移を誘起するための光源としてマイクロ波シンセサイザー(出力範囲は1-20GHz)、及び自由誘導減衰信号をコンピューターに取り込むための高速デジタルオシロスコープ(サンプリング周波数10GHz、帯域600MHz)を購入した。これらの装置を組み合わせる事により、約330マイクロ秒間の自由誘導減衰信号をコンピュータに取り込み、それをフーリエ変換して分子の回転遷移のパワースペクトルを得るシステムを構築した。このシステムで得られるパワースペクトルの帯域は50MHzで、周波数分解能は3kHzを達成している。 効率良くコヒーレント相互作用を起こさせるために、直径200mm、曲率半径300mmのアルミ製凹面鏡を2枚組み合わせた共焦点型のマイクロ波共振器を作製した。2枚のミラー間隔を変化させる事で、あらゆる周波数において共振条件を実現できるように、片方のミラーを可動式にした。パルスモーターで駆動する事より、1ミクロンの精度でミラー間隔を調整できる。これは約0.5kHzの周波数精度で共振器の縦モードを選択できる事に対応する。 シンセサイザーの出力を共振器に入力し、14GHzを中心に1GHzの範囲で周波数を掃引しながら、共振器からの反射マイクロ波のパワーを測定する事で、共振器の特性評価を行った。その結果、縦モードの基本モード間隔が456MHz、共振時のディップの半値全幅が2MHzであった。これは、共振器のフィネスが230で、Q値が7000に対応する。作製した共振器を用いる事で、シンセサイザイーから放射されるマイクロ波パワーを、本実験で必要とされるレベルにまで増幅する事が可能である事を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、キラル分子の純回転遷移を用いて、電磁波と分子のコヒーレント相互作用を効率よく起こさせるためのシステムを完成させる事を目標に、作業を進めてきた。初年度において、自由誘導減衰信号をコンピューターへ取り込み、それをフーリエ変換してパワースペクトルに変換するシステム、及び共振器を始めとする各種ハードウェアを制御するためのシステムがほぼ完成した。また、十分長い時間コヒーレント相互作用をおこさせる目的で、分子と電磁波が相互作用する領域であるマイクロ波共振器を超音速分子線装置内に設置するための真空系の整備も終えた。これを用いて平成25年度中に、実際のキラル分子を対象に、マイクロ波とのコヒーレント相互作用を用いた量子状態の制御実験を行う事ができる。上述の実験装置の準備状況から判断して、本研究課題は概ね計画通りに進行しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の実験においては、より幅広いキラル分子を対象に実験を行う事が重要となる。平成24年度に整備した超音速分子線装置は、観測対象となる試料が室温において気体、または液体である必要がある。一般に固体試料は蒸気圧が非常に小さいため分子線を生成する事が困難である。このような制約と、十分な分極を誘起するための永久双極子モーメントを有する必要がある事等を考慮して、1,2-プロパンジオールの誘導体を対象に、実験を進めて行く予定である。しかしながら、キラル分子の代表であるアミノ酸は、その多くが室温で固体である。様々なアミノ酸分子を実験対象とするためには、超音速分子線装置に改良を加える事が必要となる。ただし、加熱する事で固体試料から超音速分子線を生成する技術は既に確立されているので、改良は問題無く行えると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当無し
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