研究課題
水素分子にエネルギー30eVの真空紫外光子を照射し光解離させると、磁気量子数のもつれた励起2p原子ペアが生成する。この2p原子ペアからの2光子放出過程において、その放出角度相関と検出時間相関に顕著な圧力効果が見られ注目を集めていた。それらの圧力効果が“もつれ”の喪失で説明できるであろうという仮説のもと、両者の関係解明を目的に研究を開始した。しかし、H24年度に検出器と計数系の更新を進めた結果、この圧力効果が“もつれ”の喪失とは関係のない、宇宙線ミューオンの影響で説明できることが明らかになった。宇宙線ミューオンの同時計数実験への影響に関しては報告例が無いが、その影響を無視できる条件で再測定したところ、従来の圧力範囲では圧力効果が見られなかった。この結果をH26年度にPhysical Review A誌に公表した。実測した光子対の放出角度相関と理論予測の間には定量的な食い違いがみられ、H26年度には、その原因を究明するためにHDからの光子対放出角度相関測定を行った。ボルンオッペンハイマー近似の下ではHDの波動関数は、電子の交換に関しては対称性を持つが、原子核の交換に対しては対称性を満たす必要が無い。波動関数の対称化の要請が原子ペアの波動関数に及ぼす影響を検討するため、原子核の交換に対する対称性の影響が要請されるH2と要請されないHDの放出角度相関を比較した。しかし、事前の予測に反し、実測した放出角度相関には水素とHDとで有意な違いはみられなかった。この結果の解釈に関しては現在検討中である。
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Phys. Rev. A
巻: 90 ページ: 043405
http://dx.doi.org/10.1103/PhysRevA.90.043405