研究課題/領域番号 |
24550014
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
関根 あき子 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (40226650)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | フォトクロミズム / 結晶相光反応 / 固相光反応 / アゾベンゼン / コバロキシム錯体 |
研究概要 |
フォトクロミック化合物サリチリデンアミノピリジン誘導体であるサリチリデン-tert-ブチルー3アミノピリジンを配位子とする2-シアノエチルコバロキシム錯体を合成した。紫外光によりサリチリデンアミノピリジン部位を異性化させ、可視光により2-シアノエチル基を異性化させることができ、2種の光反応を波長制御することに成功した。また最適な光反応条件を見つけることにより、単結晶状態を保ったまま2-シアノエチル錯体から1-シアノエチル錯体へ光異性化させることができた。そこで、可視光照射前の2-シアノエチル錯体結晶にサリチリデンアミノピリジンの着色体の退色速度と可視光照射後の1-シアノエチル錯体へ異性化させた結晶におけるサリチリデンアミノピリジンのフォトクロミズムの退色速度をそれぞれ測定し、寿命を求めたところ、可視光照射時間が経つにつれ、1-シアノエチル錯体が生成し、それとともに寿命が短くなることがわかった。可視光照射前後のX線結晶構造解析の結果より、可視光照射後に寿命が短くなったのは、結晶中においてサリチリデンアミノピリジンに隣接している分子のシアノエチル基が異性化することにより、サリチリデンアミノピリジンの反応部位の周囲の空間が広がったために、元のエノール体に戻りやすくなったためであると解明できた。 このように、他波長で光反応する置換基を導入することにより、その結晶相光反応によってフォトクロミック反応基周囲の結晶環境を変化させることで、フォトクロミック反応性を変化させることが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しい戦略のもと、新規錯体を合成し、光反応実験および物性測定を行ったところ、おおむね期待していた反応制御に成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今年度用いた2-シアノエチルの光反応基をより嵩高い置換基である3-シアノプロピル基に置換した錯体を作成し、今年度同様にフォトクロミズムに及ぼす影響を調べてみる。また、フォトクロミック反応部分をサリチリデンアミノピリジンからアゾベンゼン誘導体に換えた錯体を作成して、同様に反応性の変化を調べてみる。アゾベンゼン誘導体のフォトクロミック反応では、サリチリデンアミノピリジンの錯体とは異なり、トランス体からシス体への構造変化が大きく、異なるふるまいをすることが予想される。反応性が変化させることができたら、その理由をX線結晶構造解析することにより3次元構造から解明する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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