これまでの研究成果により、1-クロロ2-ブロモエタンの2価イオン状態における炭素間結合の解離過程には強い振電相互作用の考慮が必要であり、当該計算手法には幾つか問題があるため、計算の効率化を進められなかった。一方、前年度の報告書にも述べたように本研究の基礎部分が共通である「電子伝播関数法におけるスピンスケール補正」の研究は進展を見せ、この研究の進捗状況によっては、本研究の研究計画時には想定していない計算手法の発展が期待された。よって当初予定した研究課題(2)つまり「密度汎関数法を用いた多電子伝播関数プログラムの開発」は一時凍結し、課題(1)の「電子伝播関数計算プログラムの並列化」およびスピンスケール補正等の近似の導入による効率化を最優先に図った。 課題(1)のプログラムの並列化にはCPUコア内の並列化には成功したが、ノードを越える並列化には至っていない。また、この並列プログラムを用いた研究結果は、現在も検討中であるため発表のめどは立っていない。 新規課題である電子伝播関数におけるスピンスケール補正の導入については、幾つか新たな知見が得られた。そこで広く社会に研究成果を知らしめるため、本年8月に開催された分子科学若手夏の学校にて招待講演としてその成果を発表した。加えて、電子伝播関数による電子状態計算の重要性を享受するため、当該夏の学校にて集中講義を行った。
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