研究課題/領域番号 |
24550017
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
飯山 拓 信州大学, 理学部, 准教授 (30313828)
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キーワード | 分子混合状態 / 微小空間 / ナノ空間 / マクロ・メソスケール / X線回折 / 吸着等温線 / 多成分 / X線小角散乱 |
研究概要 |
微小空間中では、強調された表面-分子間ポテンシャルと、分子数個分にまで制限された空間の制約効果によって、通常とは異なる分子状態が生じる。微小空間中の分子混合状態は、その重要性にもかかわらず、実験的困難のためにその解明が十分に進んでいない。本研究は、成分別の吸着量を簡便にかつ精度よく決定する新しい方法を確立し、これを用いた2成分系の吸着量測定と、in situ 条件におけるX線小角散乱測定によって、微小空間中の分子混合状態を解明することを目的とする。 本研究においては、本研究室で開発した圧力フィードバック吸着量測定装置に、あらたに組成分析センサーと複数のガス導入機構を加えた多成分吸着量測定装置を作成し、それによる実測と、改良を進めてきた。昨年度までに作成した機構を用いて、活性炭-水-エタノール系については複数の気相モル比に対応した成分別吸着等温線を測定することに成功した。これはこれまで記述法、実験法がほとんど確立していなかった混合吸着系をシンプルに、かつ的確に表現する実測法であり、極めて大きな成果と言える。測定はさらに別の吸着系についても進行させた。 また、X線回折測定を用いた微視的な構造解明についても検討を進めた。本測定を行うために、新たに混合吸着測定用のX線測定セルを開発、製作した。測定は前述の方法により吸着量データがそろった活性炭-水-エタノール系から開始し、すでに細孔内の分子混合状態に関するデータを得ることに成功した。 さらに、以上のマクロとミクロにわたる2つの実験結果をつなぎ、解析するための分子シミュレーションプログラムの開発を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2年次の目標は、構築した成分別吸着測定機構の検証と適用、およびバルクで混和しない組み合わせの混合吸着についての検討であった。前述のように、圧力フィードバック機構を用いた吸着量測定装置の混合吸着系への適用は順調に進行し、特許の出願を行うことができた。検討はバルクでは混和しない系を含む複数の系について、吸着等温線測定だけでなく、X線回折測定についても進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
吸着量というマクロな量については信頼度が高く、かつわかりやすい情報を示すことができるので、さらに多くの系について適用を進める。 混合状態の分子間構造というミクロな情報については、コンピュータシミュレーションを用いたよりわかりやすい提示法を進める必要がある。 研究の最終年度であるので、研究のまとめと、対外発表を意識して研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画よりも安価で消耗品が購入できたため、次年度使用額が生じた。 成分別等温線の測定手法の確立は順調に推移している。X線測定のための測定セルや圧力調整のためのバルブなど、微視的測定機構を優先して進める。中性子測定のマシンタイムを確保することができたので、この測定のためのセル作成を行う。ガスセンサーの消耗部品の購入や、寒剤など、研究必要物品の購入をについては前年度未使用額を26年度経費と合わせて使用する。
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