波長依存分極率算定プログラムコード“response”を構築した。開発の基盤となったのは、公開ソースプログラムmadnessの中の量子化学計算モジュールmoldftであり、これに互換性をもたせるような設計に基づき、分極率算定モジュールの構築を行った。応答関数方程式の解法に関するモジュールresponseは、moldftの中のHartree Fock/Density Functional Theory部分と同様、多重解像度多重ウェーブレット基底関数上での微分・積分方程式の解法アルゴリズムに基づいており、事実上基底関数極限と見なすことのできる方程式を解いている。したがってHartree Fock/Density Function Theoryに使うequation solverを踏襲して行うことが可能である。ただしresponseは線形方程式であり、また励起、反励起に対応する変数があるためカップリングした2倍の変数を持つ連立方程式となっているが、我々はequation solverを改築することによりそれを実現した。またHartree Fock/Density Function Theory 部分と異なりResponseでは異なる周波数に対応した計算を行わねばならず、共鳴領域でのequation solverのperformanceについての検証を必要とした。 madnessは、主にアルゴンヌ国立研究所(ALCF、シカゴ)及びストーニブルック大学(SBU、ニューヨーク)のグループによって開発されており、我々が主となり開発したresponse function算定の部分との整合性を取るため、実際にコーディングを受け持った大学院学生がそれらの研究機関に滞在し、実装作業を行った。さらに豊橋技術科学大学の保有するミニスーパーコンピュータ・次世代シミュレーション技術者教育計算機システム(同・情報メディア基盤センター)への実装のためのジェネリックコードを開発、効率検証を行った。SBUでのコードは実働を開始し、一般分子での試算が行われているが、豊橋技術科学大学のシステムでの効率検証は本年度に持ち越された。
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