研究課題/領域番号 |
24550022
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 武志 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30397583)
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キーワード | 化学反応 / 励起状態 / 溶媒効果 / ダイナミクス / 統計力学 |
研究概要 |
凝縮相における光化学反応やそれに伴う励起状態ダイナミクスを分子シミュレーションで調べるための新しい理論的手法の開発を行っている。溶液やタンパク質中の光励起反応を調べるための方法としていわゆるQM/MM法(反応系の電子状態を量子力学的に扱い、環境を分子力場で扱う)があるが、実際の応用では2つの大きな技術的問題が生じる事が知られている。一つは電子状態理論の精度とコストの問題であり、もう一つは統計サンプリングの必要性である。励起状態ダイナミクスは周囲のミクロな環境(溶媒やタンパク質)の微視的状態に依存するが、実験結果と比較するためにはそのような状態に関して統計サンプリングを行うことが不可欠である。上の2つの事は、励起状態ダイナミクスの理論的取り扱いを非常に計算コストの高いものにしている。本研究では、この問題に対処するため次の3つの新しい方法を研究している:(1)MM環境の応答を動的平均場近似で扱うことで、電子状態計算の回数を大幅に減らすための方法(反応系と環境のカップリングに対する時間依存ハートリー近似に対応)。(2)励起状態から基底状態に復帰する電子緩和のダイナミクスを出来るだけ少ない計算量で追跡するための方法(状態チェインの方法を非断熱過程に拡張する試み)。(3)凝縮相中の非断熱電子移動反応を効率良く調べるための新しいQM/MM法の開発。本年度は特に(1),(3)のためのアルゴリズムの研究を行った。(1)についてはsystem-bathモデルを用いたテストを進め、厳密解と比較することで環境を動的平均場として扱う際のカップリングや時間発展の方法について検討した。(3)については、非断熱自由エネルギーの交差点の同定に必要となる量(非断熱自由エネルギー面の解析的微分など)を電子状態計算と分子動力学計算で効率よく求めるための表式を導出し、その収束特性やコストについて調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(理由) 前年度までに行っていた博士課程学生との共同研究(電子基底状態に対するQM/MM自由エネルギー法の研究およびユビキノール・ビタミン系の抗酸化反応の研究など)が平成25年度までずれこんだため、電子励起状態に対する本研究がやや遅れている状況にある。動的平均場の方法については、system-bathモデルを用いて反応系と溶媒系のカップリングの仕方や時間発展の方法について検討した。溶液内非断熱電子移動については、非断熱自由エネルギー面の交差点を探索するために必要な諸量(非断熱自由エネルギー面の解析的微分など)を分子動力学計算で効率良く求めるための方法のテストなどを行った。これらをさらに発展させ、現実の反応系に応用することは本年度以降の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に研究計画の記載の通りに進める予定である。「現在までの達成度」に記載の通り、進展がやや遅れているが、平成26年度はこれまでに準備した方法をさらに進め、応用計算へ展開することを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度までの研究進展状況にやや遅れが出ているため、予定していた計算機の 購入計画の一部を翌年度に繰り越したため。 平成26年度に購入する計算機については、予定通り励起状態ダイナミクスの応用計算に用いる予定である。
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