研究課題/領域番号 |
24550025
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
松本 正和 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (10283459)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | クラスレート化合物 / 分子シミュレーション / 結晶の安定性 / 結晶構造選択則 / 準結晶 |
研究概要 |
Frank-Kasper型クラスレート化合物の安定性を簡便に評価する理論を考案し、それに基き、同化合物の一般化相図を作成し、結晶構造の多様性がなぜ非常に限られているかを簡潔に説明した。この理論は、当該分野で50年に渡り未解決であった、同化合物の結晶選択性に関して、はじめて一般解を与えた。 四面体型ネットワークを形成する水や炭素族元素のクラスレートを構成要素として、計算機シミュレーションにより10角形および12角形準結晶構造を作成し、他の結晶構造との安定性の比較を行った。準結晶は最安定構造にはならないものの、できるだけ安定相に近い自由エネルギーとなるように、ゲスト分子の相互作用パラメータを調節した。その上で、分子動力学シミュレーションにより、準結晶の成長を再現した。 クラスレートのゲスト分子の交換速度を調べるため、様々なサイズのゲスト分子を内包したクラスレートハイドレートの分子動力学シミュレーションを行い、その拡散速度と拡散の自由エネルギー障壁を、直接測定と熱力学積分により推定した。ネオン級のサイズの場合には、ゲスト分子はケージを壊すことなく大ケージから大ケージに6員環を通って高速に拡散できるが、酸素分子や窒素分子のサイズになると、ゲストの拡散は必ずケージの破壊をともなう。このため、ケージに水の空孔欠陥があると拡散が著しく速まること、完全なケージの間をゲストが移動する場合に、しばしば副作用として空孔欠陥が形成し、押し出された水分子が陥入欠陥として結晶格子の中を高速に動き回ることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)結晶選択則をより簡潔に推定するのに必要な、もう一つの一般理論(空結晶格子の安定性の一般理論)がまだ発見できていない。 (2)選択可能な結晶構造が、準安定相を含めてもまだ少ない。より幅広い物性設計のためには、混合ホスト型結晶等の安定性評価を行い、結晶構造の多様性を増やす必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
(1)については、ひきつづき検討を行う。(2)については、Frank-Kasper型クラスレート構造のうち、まだ安定性を評価していない構造が多数ある。(1)とも関連するが、構造を作っては安定性を評価する、という手順では、理論上は無限の多様性のあるFrank-Kasper型クラスレート構造の宝探しをするのは時間がかかりすぎるので、できるだけ簡便な一般理論を作り、シミュレーションすることなく結晶の安定性と物性を推定する方法をひきつづき模索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に計算サーバに投資し、仮説の検証にかかる時間を短縮する。
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