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2012 年度 実施状況報告書

光電子分光法による孤立五員環則を満足しない内包フラーレンの電子構造解明

研究課題

研究課題/領域番号 24550026
研究機関愛媛大学

研究代表者

日野 照純  愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (10105827)

研究分担者 宮崎 隆文  愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (70260156)
八木 創  愛媛大学, 理工学研究科, 助教 (90442532)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード光電子分光 / フラーレン / 電子状態
研究概要

孤立五員環則を満足する内包フラーレンEr2@C82(I), Er2@C82(III), Er2C2@C82(I) Er2C2@C82(III), Gd3N@C80およびLu内包フラーレンの紫外光電子スペクトル(UPS)を測定し、これらフラーレン類の電子状態についての情報を得た。Er内包フラーレンのUPSは、ケージ構造が同じであれば、類似の電子状態を持つという経験則に沿っているものであった。また、C2内包の有無により、結合エネルギー4eV付近に微妙な電子状態の違いが観測された。密度汎関数法(DFT)を用いて電子構造の解析を行ったところ、この違いは内包されたC2に由来することが判明した。Gd3N@C80の電子構造はTm3N@C80のものとよく似たものであった。Lu内包フラーレンでは、Lu4f由来の構造が観測された。また、内包金属種が同じであってもケージのサイズが異なれば、電子状態が大きく変化することが見いだされた。
本研究の主目的である孤立五員環則を満足しない(Non-IPR)内包フラーレンSc3N@C68のUPSとX線光電子スペクトル(XPS)の測定に成功した。Sc3N@C68のUPSには、他の内包フラーレンに観測される以上の多数の構造が観測された。このスペクトルを検討するために、DFTによる計算を行い、紫外光電子スペクトルの解析を行った。DFT計算により求められたSc3N@C68の電子構造からつくられたシミュレーションスペクトルは実測のUPSを非常に良く再現するものであり、実験と計算の妥当性を互いに保証するものであった。Sc3N@C68のXPSを他の内包フラーレンSc3N@C78やSc3N@C80と比較したところ、フラーレンケージサイズが小さくなるほどSc2pとN1は低結合エネルギー側にシフトすることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

Non-IPRフラーレンSc3N@C68は熱的に不安定ではないかと思われたが、680K程度にまで加熱しても壊れることなく昇華可能であることが判明した。そこで、光電子分光に適した清浄表面を持つSc3N@C68の蒸着膜の作成に成功し、定量的な解析に耐えうる紫外光電子スペクトルを得ることが出来た。
また、理論計算の順調に進行しており、ほぼSc3N@C68の電子構造と内包原子団の構造を明らかに出来つつある。
他のIPR内包フラーレンの測定も順調に進行しており、ほぼ研究目的の80%以上が達成された。

今後の研究の推進方策

Sc3N内包フラーレンのXPSを比較することにより明らかとなったSc2pやN1s準位の化学シフトの奇妙な振る舞いの原因を明らかにする。これにはDFT計算だけでは解決できない可能性が高いので、他の内包フラーレンのXPSを測定することにより、電子移動の様子を検討する。
また、理論計算の手助けを得て、Non-IPRフラーレンの安定性について検討する。

次年度の研究費の使用計画

当初の計画では、理論計算を行うためにWork stationを購入する予定であったが、昨年度に導入した64bit版Windows上で稼働できるプログラムモジュールGaussian09の能力が非常に高いことが判明したので、パソコンを複数台購入して計算を行わせる予定である。
また、前年度に引き続き内包フラーレンの光電子分光測定を行う関係で、真空関係の部品を購入する。
さらにこれまでの研究により十分な研究成果が得られているので、学会発表や論文出版のための経費に充当する。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Ultraviolet photoelectron spectra of Lu atoms encapulated C2v-C82 fullerenes2013

    • 著者名/発表者名
      Takafumi Miyazaki, Ryohei Sumii, Hisashi Umemoto, Haruya Okimoto, Toshiki Sugai, Hisanori Shinohara, Shojun Hino
    • 雑誌名

      Chem. Phys. Letts.

      巻: 555 ページ: 222-225

    • DOI

      dx.doi.org/10.1016/j.cplett.2012.11.069

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Photoelectron Spectroscopy of Sc3N@C782012

    • 著者名/発表者名
      Shojun Hino*, Masashi Zenki, Takeyuki Zaima, Yusuke Aoki, Sosuke Okita, Tomona Ohta, Hajime Yagi, Takafumi Miyazaki, Ryohei Sumii, Haruya Okimoto, Yasuhiro Ito, Hisanori Shinohara
    • 雑誌名

      J. Phys. Chem. C

      巻: 116 ページ: 165-170

    • DOI

      dx.doi.org/10.1021/jp20763k

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Ultraviolet Photoelectron Spectra of Er2@C82(I), Er2@C82(III), Er2C2@C82(I) and Er2C2@C82(III)2012

    • 著者名/発表者名
      Takafumi Miyazaki, Ryohei Sumii, Hisashi Umemoto, Haruya Okimoto, Yasuhiro Ito, Toshiki Sugai, Hisanori Shinohara, Takeyuki Zaima; Hajime Yagi, Shojun Hino
    • 雑誌名

      Chem. Phys.

      巻: 397 ページ: 87-91

    • DOI

      doi:10.1016/j.chemphys.2012.01.007

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Synthesis and properties of 2-alkylidene-1,3-dithiolo[4,5-d]-4,5-ethylenediselenotetrathiafulvalene derivatives and crystal structures of their cation radical salts2012

    • 著者名/発表者名
      Keisuke Furuta, Shuhei Kohno, Takashi Shirahata*, Koya Yamasaki, Shojun Hino and Yohji Misaki
    • 雑誌名

      Crystals

      巻: 2 ページ: 393-412

    • DOI

      doi:10.3390/cryst2020393

    • 査読あり
  • [学会発表] Hf2C2@C84の紫外光電子スペクトル2013

    • 著者名/発表者名
      宮崎隆文・太田知那・中西勇介・西龍彦・八木創・篠原久典・日野照純
    • 学会等名
      日本物理学会第68回年次大会
    • 発表場所
      東広島市
    • 年月日
      20130326-20130328
  • [学会発表] 内包フラーレンの電子状態と構造2012

    • 著者名/発表者名
      日野照純
    • 学会等名
      日本化学会西日本大会
    • 発表場所
      佐賀市
    • 年月日
      20121110-20121111
    • 招待講演
  • [学会発表] 密度汎関数法によるクラスター内包フラーレンの理論的解析2012

    • 著者名/発表者名
      太田知那、八木創、宮崎隆文、日野照純
    • 学会等名
      日本化学会西日本大会
    • 発表場所
      佐賀市
    • 年月日
      20121110-20121111
  • [学会発表] Lu内包フラーレンの光電子分光2012

    • 著者名/発表者名
      日石孝宏・中西勇介・西龍彦・大北壮祐・太田知那・八木創・宮崎隆文・篠原久典・日野照純
    • 学会等名
      日本化学会西日本大会
    • 発表場所
      佐賀市
    • 年月日
      20121110-20121111
  • [学会発表] 密度汎関数法による単核内包フラーレンの電子状態2012

    • 著者名/発表者名
      清野友真・太田知那・宮崎隆文・日野照純
    • 学会等名
      日本化学会西日本大会
    • 発表場所
      佐賀市
    • 年月日
      20121110-20121111
  • [学会発表] 密度汎関数法を用いた金属内包フラーレンHf2C2@C84の電子構造2012

    • 著者名/発表者名
      太田知那、西龍彦、八木創、宮崎隆文、篠原久典、日野照純
    • 学会等名
      第6回分子科学討論会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20120918-20120921
  • [学会発表] 多核原子内包フラーレン-紫外光電子スペクトルと構造・電子状態(IX)2012

    • 著者名/発表者名
      宮崎隆文・中西勇介・佐々木祐生・西龍彦・小笠原直子・大北壮祐・八木創・篠原久典・日野照純
    • 学会等名
      第6回分子科学討論会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20120918-20120921
  • [学会発表] Gd3N@C80の紫外光電子スペクトル2012

    • 著者名/発表者名
      宮崎隆文・小笠原直子・太田知那・西龍彦・中西勇介・佐々木祐生・篠原久典・日野照純
    • 学会等名
      日本物理学会2012年秋季大会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      20120918-20120921

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公開日: 2014-07-24  

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