研究課題/領域番号 |
24550027
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
渡邉 祥弘 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20315055)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 電子状態 / 相対論量子化学 / 多参照理論 |
研究概要 |
多重縮退系電子状態の理論的解明を目的に,相対論多参照理論とアルゴリズムの開発を行った. 4成分相対論多参照配置間相互作用(MR-CI)は系に依らず精度の良い結果をもたらすが,系が大きくなると計算コストが膨大になるデメリットがある.4成分相対論多参照摂動論(GMC-QDPT)は,低い計算コストで動的電子相関を取り込める優れた摂動論で,閉殻系や安定構造付近の記述では良い成果が出ている.更に開殻系や多重縮退の電子状態へ対応するために,多配置SCF(MCSCF)を組み込んだ. これまで参照波動関数として活性空間においてfull-CI計算(CASCI)を用いてきたが,本研究の対象に含まれるランタノイドやアクチノイドではf電子による電子状態の記述から大きな活性空間が必要となり計算が困難となっている. そこで,Occupation restricted multiple active space(ORMAS)CIを相対論に拡張し,参照波動関数として採用した.ORMAS-CIは活性空間を部分空間に分割し各部分空間の占有電子数を指定することで重要な電子配置を効率よく生成できる方法である. また,多重縮退の記述を詳細に調査する上で基底関数による計算精度への影響をなくすために,本研究の計算対象全てで共通に用いることが可能なUniversal基底関数を作成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度で行う予定であったいくつかの分子計算が実行できていない. しかし,今回新たに参照波動関数としてORMAS-CIを採用できるように拡張したことにより、今後の計算を効率よく実行する事が可能となった.よって、本研究の達成度としては順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
引き続きランタノイドおよびアクチノイドに対して,相対論的摂動論原子計算を行い,原子核半径の影響やイオン化の記述を詳細に調査を行う. これらの調査から,ランタノイド水素化合物や酸化物について系統的な分子計算を行う. 続いて,アクチノイド化合物などの調査を行う予定である. これまでの計算結果は学術論文や学会で発表する.作成した基底関数はホームページで公開する.
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次年度の研究費の使用計画 |
ランタノイド化合物の計算から,その後のアクチノイドの原子計算,または,水素化合物や酸化物を含めて,系統的な分子計算を実行するための計算機環境を整える.計算の進行状況に応じて、汎用計算機を購入する予定である. また,研究結果については国内および海外の学会や学術論文で発表する.
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