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2013 年度 実施状況報告書

グリーン・エレメントからなる環境半導体ベータ相二ケイ化鉄の電子構造精査

研究課題

研究課題/領域番号 24550029
研究機関熊本大学

研究代表者

藤本 斉  熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (30183932)

キーワード電子状態 / グリーン・エレメント / 軌道放射光 / 顕微ラマン分光 / 二ケイ化鉄
研究概要

半導体相二ケイ化鉄の薄膜及び単結晶は,ラマンスペクトルに共通する鋭い振動ピークを示した。ただし,ピークの位置にわずかな違いがみられ,結晶格子に掛かるひずみなど両者には相違があるものと推測される。また,二酸化ケイ素と同じような幅広いピークも観測され,これは表面の酸化膜に由来すると考えられる。一方,半導体相二ケイ化鉄の市販試料は,顕微鏡観察によると一辺が1 mm以下の立方体に近い微結晶試料ではあるが,ラマンスペクトルに振動ピークを示さず,二酸化ケイ素と同じ領域に幅広いピークを示すのみであった。これは,金属相及び成分元素である鉄とケイ素の酸化物が混入しているためであると考えられる。
表面の二酸化ケイ素は,約900℃で除去でき,この温度付近で二ケイ化鉄は半導体相から金属相に転移する。また,1000℃付近に融点が存在する。これらの温度を基に保持温度や保持時間などを様々に変化させ,均一な試料の焼成条件を模索した。
試行実験により,1200℃で微結晶は互いに融着し,900℃で保持することで二ケイ化鉄は半導体相を与えることがわかった。一方,1200℃から急冷することでラマンスペクトルに全くピークを与えない金属相が得られることもわかった。これらの保持時間を様々に変化させ顕微ラマンスペクトルを評価手段として焼結条件の最適化をしたところ,市販試料程度の大きさの微結晶は,1200℃で6時間保つことで互いに融着し,900℃の保持時間は最低でも200時間必要であることがわかった。この時間以下で作成した試料の切断面で測定したラマンスペクトルでは,位置によって異なる振動ピークを与え,また,金属相に特有の全く振動ピークを与えない部分も存在していた。900℃で400時間保持してもスペクトルには大きな変化がなかった。焼結試料は内部に多数の空洞をもつが,ラマンスペクトルからは均一で電子状態研究に支障はないと考える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

研究実績の概要に記述したように,試料を作成するに当たり一つの条件を変えるだけでもその条件の最終検証までに数百時間という長時間を要し,条件の最適化に当初予想していた以上の時間を費やしたことが最大の理由である。加えて,この課題が採択されるのと同時に本学の全学共通教育を担う教養教育機構副機構長に任命され,週平均で3回以上の委員会等への出席を余儀なくされ,大学運営に係るエフォートが当初申請時の予想をはるかに超えて現在に至っている。特に今年度は,全国国立大学教養教育実施組織会議が本学で開催され,その運営なども加わり繁忙を極め,他機関へ出向いての測定するための時間を確保できなかった。

今後の研究の推進方策

焼結試料内部の空洞を減らすため,粉砕試料による焼結を試みる。ただし,粉砕により酸化を促進する可能性があるため,その影響をみるため焼結時の質量減少の比較をするなど粉砕操作が適切かの検証を別途する必要がある。これらの結果を基に最適化された焼成条件で作成した試料を使って,粉末X線回折によりラマン分光の結果を検証するともに,光電子分光法による電子状態の観察を行う。金属相と思われる急冷試料との比較も同時に行う。特に価電子帯の構造は,軌道放射光利用した共鳴および一定始状態光電子分光法により調べる。金属相との比較により,半導体のギャップの起因についての考察をする。
今年度実施できていない試料作成の履歴による価電子状態を調べるため,ガスフロー装置と常時低真空で稼動可能な排気装置を導入し,様々な条件下で作成した焼結試料により履歴や表面状態と価電子構造の関係を調べる。排気装置等の検討は業者と既に行っており,早い時期に導入する。試料の作成には長時間を要することから,鍵となる条件を早期に見出す必要がある。
諸般の事情により研究の遂行が当初計画よりかなり遅れており,次年度の早い段階で研究期間の延長も視野に入れた研究計画の変更についての判断をする。

次年度の研究費の使用計画

試料の焼結条件を一つ変えるだけでもその最終検証に数百時間という長時間を要し,条件の最適化に当初予想していた以上の時間を費やしたことが最大の理由である。加えて,この課題が採択されるのと同時に本学の全学共通教育を担う教養教育機構副機構長に任命され,週平均で3回以上の委員会等への出席を余儀なくされ,大学運営に係るエフォートが当初申請時の予想をはるかに超えて現在に至っている。今年度も再任され,本学で開催された全国国立大学教養教育実施組織会議の運営なども加わり繁忙を極め,当初予定していた他機関に出向いて実験をするための時間を一切確保できなかった。
当初の研究計画の1年半程度まで進行しており,試料作成のための真空下での焼成条件が最適化された状況にある。当初予定の様々な雰囲気下での焼成実験とそれに伴う試料の状態を非破壊で行うとともに電子状態を調べるために軌道放射光を使った実験を今年度実施できなかった部分を含め実施する。
次年度の前半までの進捗状況によって研究計画の最終見直しを行い,場合によっては研究期間の延長も考慮する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013

すべて 学会発表 (4件)

  • [学会発表] p-フェニレンジアミン類とハロキノン類の電荷移動錯体の電子構造2013

    • 著者名/発表者名
      高岩司,藤本斉,隅本倫徳
    • 学会等名
      2013年日本化学会中国四国支部大会
    • 発表場所
      広島大学
    • 年月日
      20131116-20131117
  • [学会発表] サブフタロシアニン類の物性2013

    • 著者名/発表者名
      馬場断,藤本斉,隅本倫徳
    • 学会等名
      2013年日本化学会中国四国支部大会
    • 発表場所
      広島大学
    • 年月日
      20131116-20131117
  • [学会発表] チタン(IV)ビスフタロシアニンの合成と電子状態の研究2013

    • 著者名/発表者名
      三縄健斗,藤本斉,隅本倫徳
    • 学会等名
      2013年日本化学会中国四国支部大会
    • 発表場所
      広島大学
    • 年月日
      20131116-20131117
  • [学会発表] Ti(Pc) 2 および Ti(Pc) 2 + の分子構造と電子構造に関する理論的研究2013

    • 著者名/発表者名
      隅本倫徳 ,川島雪生,堀憲次,藤本斉
    • 学会等名
      第7回分子科学討論会2013京都
    • 発表場所
      京都テルサ(京都府民総合交流プラザ)
    • 年月日
      20130924-20130927

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公開日: 2015-05-28  

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