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2012 年度 実施状況報告書

非解離レーザーイオン化法の開発による生理活性物質の選択的高効率検出と機構研究

研究課題

研究課題/領域番号 24550030
研究種目

基盤研究(C)

研究機関首都大学東京

研究代表者

藤野 竜也  首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (20360638)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードMALDI法 / ゼオライト / 生理活性物質 / レーザーイオン化
研究概要

元素レベルでの分析を行う場合、イオン化の際に試料分子を壊さず分子量によって解析が行える質量分析法が有効である。マトリクス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI法)は操作・試料調整が圧倒的に簡易であるため、飛行時間型質量分析装置と組み合わせ、様々な分野における解析法として利用されている。しかしながら1)イオン化効率が低い2)低分子量試料への適用が困難3)測定できない分子がある、などといった問題点も同時に持っている。本研究ではこのような問題点を解消するため、典型的な有機マトリクス分子と構造を持つ分子との複合体の作成を行い、生理活性物質の網羅的測定法を提供する。
我々はこれまでにシクロデキストリンに有機マトリクスを包接させることにより、マススペクトルの低分子量領域が単純化され、アルカリ金属及びその付着ピークが消失すること、強い包接を作る組み合わせにおいては、マトリクス分子によるピークをほぼ消すことができることを見出した。さらに分子内にナノサイズの細孔を持ち、表面には活性の強いブレンステッド酸性水酸基が存在するゼオライトを有機マトリクス分子のホスト分子として利用したところ、低分子量領域が単純化されること、さらにはブレンステッド酸性水酸基による効果的なプロトン供与が行われるため、プロトン化した試料のピークが従来MALDI法に比べて20倍以上増強する結果を得た。本研究では酸化物固体表面(ゼオライト表面)上のブレンステッド酸性水酸基のプロトンをLi+, Na+, K+といったアルカリ金属イオンに置換し、これを有機マトリクス分子のホスト分子として利用し、新奇の分析手法を発案した。これまで観測が不可能であった数々の低分子量生理活性物質の測定に成功した。これまで測定が不可能であった覚せい剤の体内代謝物を被験者の尿から直接測定することに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

体内での代謝物の測定を可能にした点が当初計画以上に進展した点である。従来、代謝物がグルクロン酸抱合体を形成しており、レーザーイオン化による直接測定は不可能であった。しかしながら申請者らが開発したゼオライトマトリクスを利用することで、その測定が可能であることが示された。

今後の研究の推進方策

ゼオライト表面に銀や金のナノ粒子を担持させ、これらをイオン源として用いる。この際、ゼオライトからのプロトンやカチオン供給を抑制させるために、ゼオライト上のブレンステッド酸点をアンモニウムイオンによって置換する。現在この研究を進めており、これまでに、従来法では測定が不可能であったアルカンの高感度測定に成功している。アルカンは分子内に電荷の偏りがないため、付加によるイオン化がきわめて難しい分子である。しかしながらこれらの検出に成功しており、この研究を進めていく。さらには、サンマリウム系の磁性粒子を有機マトリクスに混合させる、層状化合物を利用する、半導体粒子を利用するなど、すでに研究に着手しているので、これらを進めていく。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度には当初、開発するマトリクスの物性評価のための装置購入を予定していたが、開発したマトリクスを応用した分子計測が極めて有効であることが分かったため、測定への応用を優先させた。このために予算消費に変更が生じ、残金が生じている。開発したマトリクスによる計測を大方完了させ、かつ投稿論文の目途が立ったため、今後は当初予定していたように、物性評価に移る。このため、赤外吸収スペクトルまたはラマンスペクトルを測定する必要があり、これらの購入に充てる。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Matrix-assisted laser desorption ionization mass spectrometry of maltohexaose and acetylsalicylic acid using alkali metal cation-substituted zeolites2012

    • 著者名/発表者名
      J. Suzuki, T. Fujino
    • 雑誌名

      Analytical Science

      巻: 28 ページ: 901-904

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Matrix-assisted laser desorption ionization using lithium-substituted mordenite surface2012

    • 著者名/発表者名
      J. Suzuki, A. Sato, R. Yamamoto, T. Asano, T. Shimosato, H. Shima, J.N. Kondo, K. Yamashita, K. Hashimoto, T. Fujino
    • 雑誌名

      Chemical Physics Letters

      巻: 546 ページ: 159-163

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 2,4,6-trihydroxyacetoohenone on zeolite surface: correlation between electronic relaxation and fragmentation on mass spectra2012

    • 著者名/発表者名
      R. Yamamoto, T. Fujino
    • 雑誌名

      Chemical Physics Letters

      巻: 543 ページ: 76-81

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Desorption Dynamics of Tetracene Ion from Tetracene-doped Anthracene Crystals Studied by Femtosecond Time-Resolved Mass Spectrometry2012

    • 著者名/発表者名
      Y. Minegishi, D. Morimoto, J. Matsumoto, H. Shiromaru, K. Hashimoto, T. Fujino
    • 雑誌名

      Journal of Physical Chemistry C

      巻: 116 ページ: 3059-3064

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Methyl and ethyl chloroformate derivatizations for compound-specific stable isotope analysis of fatty acid-II2012

    • 著者名/発表者名
      K. Aoyagi, A. Yamanaka, A.S. Goto, T. Fujino, T. Korenaga, Y. Chikaraishi
    • 雑誌名

      Res. Org. Geochem.

      巻: 28 ページ: 27-30

    • 査読あり
  • [学会発表] Cation Selective Ionization of Biologically Active Substances Using Zeolites2012

    • 著者名/発表者名
      T.Fujino, J.Suzuki, R.Yamamoto
    • 学会等名
      International Conference on Emerging Advanced Nanomaterials (ICEAN2012)
    • 発表場所
      ブリスベン(オーストラリア)
    • 年月日
      20121022-20121025
    • 招待講演
  • [学会発表] マトリクス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法における 脱離イオン化過程の再考察2012

    • 著者名/発表者名
      村上雅和,藤野竜也,松本淳,城丸春夫,橋本健朗
    • 学会等名
      分子科学討論会2012
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20120918-20120921
  • [学会発表] Femtosecond Time-Resolved Mass Spectrometry for Desorption Dynamics of Tetracene Ion from Tetracene-doped Anthracene Crystals2012

    • 著者名/発表者名
      Y.Minagishi, D.Morimoto, J.Matsumoto, H.Shiromaru, K.Hashimoto, T.Fujino
    • 学会等名
      19th International Mass Spectrometry Conference (IMSC2012)
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      20120915-20120921
  • [産業財産権] 分析用試薬組成及び分析方法2012

    • 発明者名
      藤野竜也
    • 権利者名
      首都大学東京
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2012-197282
    • 出願年月日
      2012-09-07

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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