研究課題/領域番号 |
24550033
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
細井 晴子 東邦大学, 理学部, 講師 (00313396)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 蛍光タンパク質 / マルチプレックス二光子吸収分光法 / 二光子蛍光メカニズム / 発色団モデル化合物 |
研究概要 |
本研究では、最もイメージングに利用される変異体enhanced GFP(eGFP)について、一光子励起によって生成するS1電子励起状態の近傍に、新しい電子励起状態(S2)が存在することをさらに明確に証明するため、二光子吸収分光法を用いて以下の二つの課題に取り組んでいる。 (1) eGFP発色団モデル化合物HBDIの二光子吸収スペクトルの溶媒依存性 本年度はまずHBDIの合成を行った。さらに、さまざまな溶媒中におけるHBDIアニオン型の溶解度を調べ、10mM以上の高濃度溶液を調製することができる溶媒として、メタノール、酢酸エチル、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドを見出した。これにより、非常に微弱な二光子吸収シグナルのシグナル/ノイズ比を向上させることが可能になった。各溶液の一光子吸収スペクトル測定により、各溶液におけるHBDI アニオンのS0-S1 遷移エネルギーを決定した。 (2) GFP とは異なる発色団構造を持つ蛍光タンパク質の電子励起状態 Cyan Fluorescent Protein (CFP)、Blue Fluorescent Protein (BFP)を大腸菌大量発現システムにより作製した。対応するCFP発色団モデル化合物の合成も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに目的の蛍光タンパク質3種類、対応する発色団モデル化合物2種類の調製が完了した。現在、それぞれの二光子吸収スペクトル測定を開始しており、順調に進展している。 (1) eGFP発色団モデル化合物HBDIの二光子吸収スペクトルの溶媒依存性 予備実験により、一光子、および二光子吸収スペクトルの吸収極大の差が、いくつかの溶媒について大きく変化していることが示された。この結果は、二光子励起によって生じる励起状態がS1の振動励起状態ではないことを意味しており、本課題のアプローチによりS2状態の存在に関する新たな知見が得られることが証明されつつある。 (2) GFP とは異なる発色団構造を持つ蛍光タンパク質の電子励起状態 CFPとその発色団モデル化合物について、一光子、および二光子吸収スペクトルの予備測定を行っている。CFPでは両スペクトルが一致しなかったのに対して、発色団モデル化合物では完全に一致した。この結果は、CFPがeGFPとは異なる二光子蛍光メカニズムをもつことを示唆しており、現在、測定条件の検討などを行ってシグナル/ノイズ比のよいスペクトルを得るための準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
各蛍光タンパク質の二光子蛍光メカニズムに関与する電子励起状態を明らかにするためには、高精度の二光子吸収スペクトルを測定する必要がある。励起波長や光学系の調整などの測定条件検討により、これを実現する。 (1) eGFP発色団モデル化合物HBDIの二光子吸収スペクトルの溶媒依存性 一光子、および二光子吸収極大のエネルギー差が、溶媒によって大きく変化しなければ(数cm-1 程度)、S1 振動励起状態が関与している可能性が高い。逆に、溶媒による差が大きければ(数百cm-1 程度)、S1振動励起状態の関与の可能性は低く、S2電子励起状態の関与の可能性が高いと結論できる。 (2) GFP とは異なる発色団構造を持つ蛍光タンパク質の電子励起状態 引き続き、CFPに関して検討を進める。BFP発色団モデル化合物の合成が文献通りに進んでいない。これに関して、他の発色団構造をもつBFPへの変更を検討している。さらに、RFPとその発色団モデル化合物についても作製を始める。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度、試薬器具類等の消耗品未購入分を繰り越したが、タンパク質調製の高効率化を図るために、本年度の研究費と合算して高速遠心機を購入し、さらにその他に、試薬器具類等の消耗品を購入する計画である。
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