研究課題/領域番号 |
24550036
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
片柳 英樹 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 助教 (00399312)
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キーワード | カーボンナノチューブ / 化学物理 / 原子・分子分光 / ナノ材料 / 反応動力学 / 太陽電池 |
研究概要 |
気相における孤立したカーボンナノチューブ(CNT)の物性および反応性を、研究代表者らが開発した光分解生成物画像観測装置と、現在開発中のCNT分子線源とを組み合わせた装置を用いて解明すること、およびこの結果と関連付けながら、CNTの電子材料等への具体的応用を試みることを目的として本研究を実施している。 25年度は、24年度に実施した予備実験の結果等に基づき、分子線源を含む真空装置の設計を主に行った。計画では製作および実験の実施まで行う予定であったが、装置の種々の改良の検討で時間を要し、製作は開始できなかった。 CNTの応用は、24年度に色素増感太陽電池(DSSC)の正極(対極)への適用という形で具体化させ、実際に電池の作製と光電変換効率の測定を行った。25年度は、作製した電池の電流電圧特性について等価回路を用いたシミュレーション等を行った。これらの結果から、CNT溶液の電極基板への滴下あるいはスピンコートのような簡便な方法で、白金対極と比較しうるCNT対極の作製が可能であることが示唆された。以上をまとめて、CNTのDSSC正極への適用に関する学会発表も行った。 26年度は、上記の真空装置を完成させ、これを用いてCNTの気相分光を試みる。まず極紫外吸収スペクトル、さらに光解離生成物収量スペクトル等の測定を目指す。これらの気相分光実験の結果より得られる基礎的物性に関する知見から、凝縮相における電子移動過程、さらに光電変換効率の向上に至るまでの関連を、同一のCNT試料という観点から統一的に理解することを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
これまでの研究で、CNTへのレーザー蒸発法の効果が概ね明らかになり、また、真空槽の基本設計ができた。さらに発展的目的として、電気化学的測定も開始し、その結果の等価回路によるシミュレーションとの比較も行った。この結果について学会発表を行った。しかし、当初の計画では25年度末までに、気相に取り出したCNTの放射光による分光の基礎を固めた上で、これを発展させる計画であった。現状では分光装置の開発に時間がかかっており、放射光分光実験を試みるに至っていないため、達成度は「遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前項の通り、初期の計画より遅れが生じているので、26年度の計画においては、優先順位を明確にし、主要な目的について着実に成果につなげる方策とする。まず、極力早期に真空装置の製作を行い、組立・設置の後、性能試験および実験を実施する。次にこれを用いて、測定に好都合な長さ分布を持つ気相CNT分子線の生成方法を確立する。その後、この分子線源を用いて、CNTの放射光分光を試みる。基礎的な分光実験の結果が得られたら、応用としての、CNTの光分解反応に関する測定等を試みる。並行して、CNTの太陽電池対極への適用に関する実験等も効率的に進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度に実施した予備的実験の結果等から、分子線源、検出部共に設計を再検討するべきであると判断して、24年度の予算で作成する予定であった真空装置を、25年度に作成する計画に変更した。そのため、これに関連する予算を繰り越していた。25年度は主にこの設計を行ったが、種々の改良の検討で時間を要したため、製作を開始できず、これに関連する予算をさらに26年度に繰り越した。 26年度は、本研究費を使用して、この装置を完成させ、性能試験および実験を実施する。また、具体的応用に関する研究にも使用する。これらの試験や実験に必要な物品費、および成果発表や情報収集、研究打ち合わせ等のための旅費として使用する。一部は、謝金その他としても使用する予定である。
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