平成26年度は、本研究課題の最終年度として、これまで共役鎖を分岐型の構造をもって集積する分子設計指針に則り合成を試みてきたアズレン系化合物を末端基としたヘキサベンゾコロネン誘導体においては、昨年度の成果による分岐型の長鎖アルキル基の導入による合成中間体の溶解度の克服を受けて、円盤状のヘキサフェニルベンゼン骨格をコアにした新規アズレン系化合物の合成に至った。その結果、目的のヘキサベンゾコロネン誘導体への変換ならびに熱的な相転移挙動や光応答機能等の複合機能の検討に目途が付いた。また、共役鎖を分岐型の構造をもって集積する分子設計指針に則り構築を検討してきたテトラシアノブタジエン骨格を基本単位とした多段階の酸化還元系の構築については、昨年度の成果による合成中間体のジメチル誘導体化で解決された課題の克服を基に、テトラシアノブタジエン骨格の集積のためのもう一つの反応性の向上の課題の克服を進めた。残念ながら、期待したチオフェン末端基の導入による反応性の十分な向上には至らなかったものの新たな末端基を持った類縁体の合成を達成した。さらに、昨年度論文として発表に至った酸化還元機能を担う骨格として着目したクマリンのアズレン類縁体の構築概念を発展させ、良好な抗菌活性が認められているトリプタンスリンに焦点をあて新たなトリプタンスリン-アズレン類縁体の高効率な構築とその基本的な性質を明らかにすることができた。また、電気化学的な応答機能とナノ構造体の形成との複合機能の構築を目指して検討を進めてきたカーボンナノチューブセグメント構築への有機合成化学的な検討においては、いくつかの巨大な環状のポリフェニレン化合物の合成に成功、有機固体発光材料としての機能ならびに相転移挙動等、熱・光・電子多重応答機能材料としての可能性を探求可能な段階に至った。
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