研究課題/領域番号 |
24550038
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
LEE Vladimir 筑波大学, 数理物質系, 講師 (90375410)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Main Group Element / Transition Metal / Schrock-type Complex / Lewis Base Ligand / Titanium / Silylidene / Double Bond / Bond Polarization |
研究概要 |
本研究課題初年度(平成24年度)に得られた最も重要な成果としては,チタンーシリレン シュロック型錯体を合成し,種々のルイス塩基を配位させた錯体へと導いたことである.ルイス塩基としては,THF, トリメチルホスフィン,イソシアニドなどを用いた.これらのルイス塩基は全てチタンへと配位しており,遷移金属側が正に分極したシュロック型錯体であることが明らかになった.チタンーシリレン錯体は tetrasilabicyclo[1.1.0]butane-2,4-diide カルシウム塩に対して1当量のチタノセン ジクロリドを作用させることで得られた.この反応は予期しなかったものではあるが,再現性良くかつ高収率で進行するので,チタンーシリレン錯体の研究に格段の進展がみられた.チタンーシリレン錯体における二重結合性に関しては特に重要であったので,実験および理論の両面から精査した.実験的にはX線単結晶構造解析,NMR, 紫外可視スペクトルによって詳細な構造を明らかにした.またDFT計算を行ったところ,HOMOは結合性π軌道,LUMOは反結合性π軌道からなることが分かった.さらにNPA計算も行い,チタンーケイ素の分極の程度を見積もったところ,チタンが正に,ケイ素が負に分極した状態にあることが示され,実験結果とよく一致しており,新規なチタンーケイ素二重結合に関する知見が得られた
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主たる目的は「Schrock型シリレンおよびゲルミレン錯体の新規合成法の開発」である.前周期遷移金属のカルベン錯体はよく研究されており,また工業化学分野においても重要性 はよく認知されている.一方,カルベンの高周期元素類縁体となるシリレンやゲルミレンのSchrock型錯体に関 する構造および反応性は現在まで未解明である.研究所年度中には新規なチタンーシリレン シュロック型錯体の合成に成功した.この成果はアメリカ化学会誌 J. Am. Chem. Soc に「Toward a Silicon Version of Metathesis: From Schrock Titanium Silylidenes to Silatitanacyclobutenes」というタイトルで速報として報告した.またこの論文はChemical & Engineering NewsのNEWS OF THE WEEK [C&E News, March 4, 2013, p12] として紹介されるなど注目されている。以上より,当初の研究計画は順調に進行していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
大きな変更点はない.今後は,合成した種々のSchrock型シリレン錯体の反応性や物性,触媒活性等に関して,理論化学者や合成化学者との共同研究へと展開していく予定である.また研究計画に記したように,ケイ素の同族高周期元素であるゲルマニウムを用いたSchrock型ゲルミレン錯体の合成と構造解析を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
Schrock型シリレンおよびゲルミレン錯体を合成するには、高純度アルゴン雰囲気にした脱酸素、脱水条件下での実験が必須である。また分析機器を最適の状態で使用するためには高純度のガスや溶媒の供給が必要不可欠である。研究経費の内、大きな割合を占めることになる消耗品は主にSchrock型シリレンおよびゲルミレン錯体やその他の出発原料の合成と反応に使用する。また合成した種々の金属錯体の構造や反応性を理論的に検証するため、非経験的分子軌道計算を行う計画であるが、必要に応じて筑波大学内にある全国共同利用施設計算科学研究センターを利用する.
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