研究課題/領域番号 |
24550040
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
中村 洋介 群馬大学, 理工学研究院, 教授 (60261864)
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研究分担者 |
加藤 真一郎 群馬大学, 理工学研究院, 助教 (70586792)
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キーワード | 複素環 / カルバゾール / チオフェン / 光物性 / π共役 / ドナー / シクロファン |
研究概要 |
(1) 前年度明らかになった,カルバゾールの種々の位置を直接または種々のスペーサーで連結したカルバゾール二量体の物性に基づき,カルバゾールの種々の位置をビニレンスペーサーで連結した三量体を合成し,その物性を検討した。三量体においては,二量体より共役がさらに拡張するとともに,ドナー性が向上すること,および連結位置に関して二量体での物性の傾向が概ねあてはまることが明らかとなった。 (2) カルバゾールとチオフェンを交互に連結した直鎖状(非環状)オリゴマーを合成し,カルバゾールやチオフェンの個数や連結位置が共役系の拡張やドナー性に及ぼす効果について明らかにした。また,カルバゾールとチオフェンが交互に連結した環状オリゴマーも合成し,非環状オリゴマーとの物性の相違を明らかにした。また,環状オリゴマーとC60等のゲスト化合物との錯形成についても検討した。 (3) カルバゾールやジベンゾフラン等の複素芳香環をジシロキサンあるいはジシランで架橋したシクロファンを合成し,その物性を検討した。ジベンゾフランをジシロキサンで架橋したシクロファンにおいては,モノマー蛍光だけでなく,エキシマー蛍光が観測された。また,ジベンゾフランをジシランで架橋したシクロファンにおいては,CT性の発光が観測された。 (4) カルバゾールの1,8位にエチニルカルバゾール部位を導入した数種類の非環状ホスト化合物(分子ピンセット)を合成し,TENF等のアクセプター分子との錯形成挙動について,NMRスペクトル,吸収スペクトル,ITC等により検討し,ホスト化合物の構造と会合定数との相関について明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,当初,大きく分けて上記に示した(1)~(4)の課題を計画していた。以下のように,いずれにおいても,当初の予定通りおおむね順調に進展している。 (1)については,カルバゾール三量体における連結位置やスペーサーの種類の違いが諸物性に及ぼす効果,および二量体との相違がおおよそ明らかとなった。 (2)については,環状カルバゾール-チオフェンオリゴマーの物性および非環状オリゴマーとの相違がおおよそ明らかとなった。 (3)については,複素芳香環をケイ素原子で架橋したシクロファンの合成に成功し,ケイ素原子の導入による特異な現象が見出された。 (4)については,合成した数種類の非環状ホスト化合物と種々のアクセプター分子との錯形成挙動について検討し,錯形成挙動に影響をもたらすいくつかの要因が明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
1)カルバゾール二量体・三量体の系については,カルバゾールの連結数をさらに増やして,主に連結数と連結位置が共役系の拡張や電子供与性の向上に及ぼす効果について明らかにする。 2)カルバゾール-チオフェン系については,カルバゾールとチオフェンの間にπスペーサーを導入し,スペーサーの導入による物性の変化を検討する。また,チオフェンをフランに置き換えた化合物の合成も併せて検討する。これにより,チオフェンとフランの複素環としての電子的特性の相違を明らかにする。 3)シクロファンについては,複素芳香環の種類やの架橋位置を変えたものを種々合成し,構造と物性の相関を明らかにする。 4)カルバゾールを基盤とする非環状ホストについては,エチニルカルバゾール部位の連結位置や置換基を変えたものを種々合成し,錯形成挙動に影響をもたらす要因についてさらに明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は,試薬や溶媒の使用を節約した結果,わずかに未使用額が生じた。 26年度は最終年度であり,さらに多くの化合物を合成する必要があることから,25年度の未使用額を26年度分の予算と合わせて,合成試薬や溶媒等の消耗品の購入に充てたい。
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