研究課題/領域番号 |
24550041
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小川 桂一郎 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (50114426)
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研究分担者 |
原田 潤 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00313172)
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キーワード | フォトクロミズム / 光異性化反応 / スピロピラン / スピロオキサジン / クロメン / 拡散反射スペクトル |
研究概要 |
スピロピラン類とその類縁体であるスピロオキサジンおよびクロメン類は,フォトクロミズムを示す代表的な化合物として知られ,反応機構に関する基礎的な研究から,調光レンズへの利用など商品開発に至るまで,非常に幅広く研究されている.これらのフォトクロミズムは,これまで,溶液やポリマー中に限られ,固相では発現しないとされてきたが,申請者らは最近,固相でも低温ならばフォトクロミズムが発現することを見出した.本研究は,これらの固相フォトクロミック反応の経路を解明し,固相ならではの反応性を生かした新規フォトクロミック材料の実現を目的としている. スピロピラン類,スピロオキサジン類,およびクロメン類のフォトクロミック反応は,いずれも,閉環体が6π電子環状反応によって開環したのち,異性化によってメロシアニン体と呼ばれる着色体を生成する.この反応は,反応前後での分子の形状が大きく変化する.一般に,固体中では分子が密に詰まっていて,分子の形状が大きく変化するような反応は進行しにくいと考えられる.それにもかかわらず,一連の化合物の固相中でフォトクロミック反応が進行したのは,それらの反応が,固体の表層付近でのみ進行しているためである可能性がある. その観点から,平成25年度は,反応の前後で分子の形状が著しく変化するような有機光反応として,アゾベンゼン類のcis-trans光異性化反応をとりあげ,その固相光反応を主に拡散反射スペクトルを用いて追跡した.その結果,アゾベンゼンおよびその置換体びcis-trans光異性化反応は,固相でも進行するが,その反応は固体の表層付近でのみ進行し,固体の内部では進行しないことを見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者らは,スピロピラン類,スピロオキサジン類,クロメン類のいずれもが固相でフォトクロミズムを示すことを見出したが,これまでその反応が,固体の内部においても進行するのか,表層でのみ進行するのかについては,とくに区別はしてこなかった.しかし,その区別をすることは,固相光反応の理解にはもちろん,応用する場合においても,非常に重要である.この問題を明らかにするため,当初は計画していなかった,より単純な系であるアゾベンゼンとその置換体について検討を行った.そのために,当初の予定と比べると,研究の進行はやや遅れているが,それを上回る重要な成果が得られたと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
固体の内部では進行できない光異性化反応が,固体の表層付近では進行できることが,アゾベンゼン類について明らかになった.このことは,他の有機光異性化反応一般にあてはまる可能性がある.そこで,最終年度は,この知見の一般性を,スピロピラン類等も含めて,この知見性を明らかにする. 固体の表層付近では,光反応の進行にともなって,融点が急激に低下して,固体試料が部分的に融解する可能性がある.それを防ぐために,今年度は,低温での光反応を追跡する.低温の実験では試料を真空下に置く必要があり,その際に,試料の昇華が起こりやすい.そのため,反応物だけでなく,生成物も融点が高い化合物を試料として,検討を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初想定していたX線管球の交換を行わないで済んだため. 物品費は,主に,試料合成に用いる薬品,溶媒,試薬,ガラス器具にあてる. 旅費は,主に,光化学討論会および有機結晶部会参加のための旅費にあてる. その他は,主に,データベース(CCDC)の支払いに用いる.
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