今年度は、多状態分子スイッチ合成に関し以下について実施した。 まず、前年度開発した2種の[2]ロタキサンの混合による多状態スイッチシステムのスイッチングの詳細について解析した。さらに、本システム素子に光検出部位をそれぞれ導入し、これらの状態変化を紫外可視吸収によって容易に観測できるシステムへと展開した。また、前年度合成した[4]ロタキサンの状態変化については、核磁気共鳴、並びに紫外可視吸収測定によって状態変化の観測に成功した。特に、電気化学的な測定を実施することで、段階的な変化に基づく酸化電位変化が観測され、スイッチングに伴う性質変換とその検出法について当初の目的を達成した。 一方分子カプセルについては、ロタキサンカプセル合成を実施し、カリックスアレンを核にする化合物、トリフェニレンを機軸とする化合物それぞれの合成を達成した。カリックスアレンを持つロタキサンについては、液性変化に伴うスイッチングは観測されたものの、トリフェニレンを有するロタキサンについては、現在まで動的な挙動は観測されていない。 研究期間全体で、第一の主題である「刺激の強弱と種類に応じた多状態分子スイッチ」に関しては、複数のロタキサンユニットをモチーフに、5状態以上の変化が観測できる分子スイッチを、1分子では2種、混合によるシステムにおいても2種それぞれ構築させ、当初の目的を達成している。一方分子カプセルに関しては、空孔の変化に伴う新しい機能化については見出せていないものの、設計した分子の中から2種合成に成功している。
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