研究実績の概要 |
近年、かさ高い置換基によって反応性部位を立体保護することで、高周期典型元素を含む多重結合や低原子価化学種といった、従来単離困難とされてきた化学種が通常の条件で取り扱い可能な化合物として合成されている。しかし低配位状態の13族元素化学種については合成例がほとんど無く、特にアルミニウム間二重結合化合物であるジアルメン(RAl=AlR)に関しては、低温マトリックス中での分光学的観測や理論計算による検討がなされてきたものの、物性や反応性は明らかにされていなかった。かさ高いアリール基を導入したジアルメンArAl=AlAr(Ar:かさ高いアリール基)に関してトルエンやアルキンを用いた捕捉反応から発生が報告されているものの、安定化合物としての単離には至っていない(Power et al., J. Am. Chem. Soc., 125, 2667 (2003). Cui et al., Angew. Chem. Int. Ed., 45, 2245 (2006).)。また、これらの短寿命中間体として発生したジアルメンと他の分子に対する反応性はほとんど検討されておらず、Al=Al二重結合の性質は未解明であった。 本研究では、かさ高いアリール基を導入したジアルメン合成を検討したところ、系中で発生したジアルメンとベンゼンがDiels-Alder反応することで生じたと考えられるバレレン骨格を有するジアルマンが、ジアルメン等価体としての反応性を有することを見出した。バレレン型ジアルマンとナフタレン、アントラセン、アルキンといった不飽和炭化水素を反応させることで、温和な条件でジアルメン移動反応が進行し、これらの不飽和化合物とジアルメンの付加環化体に対応するアルミニウム化合物を得ることができた。また、遷移金属錯体との反応では、Al-M多重結合を有する電子欠損型のアルミニウム遷移金属錯体の合成に成功した。
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