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2012 年度 実施状況報告書

テトラチエニルメタンの部分官能化体を用いた三次元拡張π電子系化合物の自在合成

研究課題

研究課題/領域番号 24550049
研究種目

基盤研究(C)

研究機関専修大学

研究代表者

松本 幸三  専修大学, 経営学部, 准教授 (40311766)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードオリゴチオフェン / 有機合成化学 / 構造有機化学 / 機能性有機分子 / 拡張π電子系化合物 / 材料科学
研究概要

オリゴチオフェン類は低い酸化電位や強い蛍光性を有し、熱的に安定で分子構造の修飾も比較的容易であるため、有機半導体の分野で近年最も盛んに研究されている化合物である。特に最近では単純な一次元鎖状のものばかりでなく、二次元あるいは三次元方向にπ共役系を拡張した分子が盛んに合成され、それらの物性が明らかになっている。
申請者はテトラキス(2-チエニル)メタン(化合物1)の合成法を独自に開発し、この分子を基盤とする三次元拡張オリゴチオフェン類の合成を行ってきた。これまで申請者は化合物1の最大の特長である対称性を重視し、主に対称型の誘導体について合成、物性の検討を行ってきた。今回申請者は化合物1の4つのチオフェン環の5位が部分的にブロモ化された誘導体を鍵中間体として、化合物1を基盤とする多彩な三次元拡張型π共役系分子を合成することを目指した。
化合物1のトリブロモ体は前駆体である化合物1のシアノ体をトリブロモ化した後に脱シアノ化することで収率よく合成することができた。ジブロモ体は(5-シアノー2-チエニル)ービス(2-チエニル)メタンをアニオンとし、2-シアノー5-フルオロチオフェンと反応させることで得た化合物1のジシアノ体をジブロモ化し、ついで脱シアノ化することで合成した。
化合物1のモノブロモ体は当初の計画通りにはいかず、さらなる検討を要したが、幸いジブロモ体の合成の過程でモノブロモ体が比較的よい収率で得られる条件を発見することができた。
これら部分ブロモ体を用いてドナー基とアクセプター基を合わせ持つ化合物1の誘導体や、強い蛍光を有し高温でも安定なガラス状態を示す新規三次元拡張π電子系化合物の合成など化合物1を基盤とする化学の多大な発展が見込まれるとともに、三次元拡張π電子系化合物の分子設計指針を明らかにする重要な知見を与えると期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請者はテトラキス(2-チエニル)メタン(化合物1)の化学のさらなる発展を目指し、「テトラキス(2-チエニル)メタンの部分官能化体を合成中間体とする三次元拡張π電子系化合物を自在に合成すること」を本研究の目的とした。
目的の自在合成のための部分官能化体として、化合物1の4つのチオフェン環の5位にブロモ基を1個から3個有する三種のブロモ体を挙げたが、トリブロモ体、ジブロモ体は当初の計画通りの方法で収率よく合成することができた。一方、モノブロモ体については当初計画した相当するシアノ体からのHunsdiecker反応による合成、あるいは化合物1のトリシアノ体の合成がともに良い結果を与えなかったためさらなる検討を要したが、幸い化合物1のジブロモ体の合成の際、条件を変えることで中程度の収率ではあるもののモノブロモ体を合成することができた。この方法では望むモノブロモ体の他に痕跡量のジブロモ体と少量の化合物1も得られるが、化合物1を直接1当量のNBSでブロモ化するよりも生成物が少なく、精製がより容易であった。
現在では鍵中間体である3種のブロモ体をある程度の量合成することが可能となり、これらを用いてさらなる拡張π電子系化合物へ展開する準備が整ったと言え、本研究はおおむね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

まず、鍵中間体となる三種類の部分ブロモ体のうち、合成が最も難しいモノブロモ体の合成について、条件をさらに検討することにより、収率の向上を目指す。現在のところ、化合物1のジブロモジカルボン酸誘導体をキノリン中銅粉と加熱する脱炭酸反応によりジブロモ体を得る反応において、触媒として加える銅粉の量を増やすことによってモノブロモ体を得ている。モノブロモ体の収率、選択性ともに十分とまでは言えず、さらなる検討を行う。
次に、合成した三種類の部分ブロモ体を用いて新規三次元拡張π電子系化合物の合成に挑戦する。その一つの例としてドナー=アクセプター型の誘導体の合成を行う。三種類のブロモ体を用いることにより、ドナー基を1個から3個有する誘導体を効率よく合成することができ、また合成法もお互いに類似の方法であることも利点である。さらにこれらの物性を系統的に比較することもでき、化合物1を基盤とする化学の発展に大きく貢献することができる。
さらにデンドリマー型分子やダンベル型の分子の合成も計画している。申請者はすでに化合物1の4つのチオフェン環の5位にトリブチルスタニル基を導入したテトラスズ体を合成している。このテトラスズ体と4当量のモノブロモ体とをStilleカップリングにより結合させることで新たな三次元拡張オリゴチオフェンデンドリマーが合成できると期待される。得られた新規化合物について、各種スペクトルを測定することによりその物性を明らかにする予定である。

次年度の研究費の使用計画

化合物1の誘導体の物性を検討するために、紫外可視分光光度計の購入を計画している。その他、新規化合物合成に必要なガラス器具や試薬、溶媒類の購入を計画している。また、研究成果発表のために学会に参加するがその旅費に使用する予定である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Synthesis and Characerization of Quarteranthene: Elucidating the Characteristics of the Edge State of Graphene Nanoribbons at the Molecular Level2013

    • 著者名/発表者名
      Akihito Konishi, Yasukazu Hirao, Kouzou Matsumoto, Hiroyuki Kurata, Ryohei Kishi, Yasuteru Shigeta, Masayoshi Nakano, Kazuya Tokunaga, Kenji Kamada, Takashi Kubo
    • 雑誌名

      Journal of the American Chemical Society

      巻: 135 ページ: 1430-1437

    • DOI

      10.1021/ja309599m

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Synthesis, Electronic and Morphological Properties of Tetrahedral Oligothiophenes with n-Hexyl Terminal Groups2012

    • 著者名/発表者名
      Kouzou Matsumoto, Sota Kugo, Daisuke Takajo, Akira Inaba, Yasukazu Hirao, Hiroyuki Kurata, Takeshi Kawase, Takashi Kubo
    • 雑誌名

      Chemistry An Asian Journal

      巻: 7 ページ: 225-232

    • DOI

      10.1002/asia.201100639

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Aromaticity and pi-bond covalency: prominent inermolecular covalent bonding interaction of a Kekule hydrocarbon with very significant singlet biradical character2012

    • 著者名/発表者名
      Akihiro Shimizu, Yasukazu Hirao, Kouzou Matsumoto, Hiroyuki Kurata, Takashi Kubo, Mikio Uruichi, Kyuya Yakushi
    • 雑誌名

      Chemical Communications

      巻: 2012 ページ: 5629-5631

    • DOI

      10.1039/c2cc31955a

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Isolation and First X-Ray Structures of Nickel Complexes of 1,2,5-Thiadiazole-3,4-dithiolate (TDAS) in Protonated Forms2012

    • 著者名/発表者名
      Kouzou Matsumoto, Maho Nishizawa, Yasukazu Hirao, Hiroyuki Kurata, Takashi Kubo
    • 雑誌名

      Heterocycles

      巻: 86 ページ: 991-996

    • DOI

      10.3987/COM-12-S(N)107

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Synthesis and Electronic Structure of Bisanthene: a Small Molecular-Sized Graphene with Zigzag Edges2012

    • 著者名/発表者名
      Yasukazu Hirao, Akihito Konishi, Kouzou Matsumoto, Hiroyuki Kurata, Takashi Kubo
    • 雑誌名

      AIP Conference Proceedings

      巻: 1504 ページ: 863-866

    • DOI

      10.1063/1.4771831

  • [学会発表] アザフルオレン類の新規合成法の開発とその性質2013

    • 著者名/発表者名
      田中莉菜・松本幸三・平尾泰一・蔵田浩之・久保孝史
    • 学会等名
      日本化学会第93春季年会
    • 発表場所
      立命館大学
    • 年月日
      20130322-20130325
  • [学会発表] 1格子電子変換可能な開殻一重項ビラジカル分子の合成2013

    • 著者名/発表者名
      エリーシャ ティユ・平尾泰一・松本幸三・蔵田浩之・久保孝史
    • 学会等名
      日本化学会第93春季年会
    • 発表場所
      立命館大学
    • 年月日
      20130322-20130325
  • [学会発表] ポリピリジルメタン類を配位子とする錯体の合成と物性2012

    • 著者名/発表者名
      常住勇弥・速水真也・松本幸三・川田知
    • 学会等名
      第62回錯体科学討論会
    • 発表場所
      富山大学
    • 年月日
      20120921-20120923
  • [学会発表] キノメチド構造が高度に集積化されたオリゴチオフェン類の合成と性質2012

    • 著者名/発表者名
      鈴木健志・井上泰平・蔵田浩之・平尾泰一・松本幸三・久保孝史
    • 学会等名
      第23回基礎有機化学討論会
    • 発表場所
      京都テルサ
    • 年月日
      20120919-20120921
  • [学会発表] 水素結合を利用した多孔質有機結晶の構築及び包接された一次元水分子鎖の動的挙動2012

    • 著者名/発表者名
      平尾泰一・猪口大輔・高橋一志・松本幸三・蔵田浩之・森初果・久保孝史
    • 学会等名
      第6回分子科学討論会
    • 発表場所
      東京大学
    • 年月日
      20120918-20120921

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公開日: 2014-07-24  

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