研究課題/領域番号 |
24550050
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
瀬恒 潤一郎 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10117997)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | らせん構造 / ポルフィリノイド / ヘリシティー / 不斉転写 |
研究概要 |
本研究では鎖状オリゴピロールの構造制御と新機能創出という研究テーマのもとに、らせん構造の向きを含めたオリゴピロールの立体構造の制御、そのπ電子系に由来する光化学特性、酸化還元特性の解明を行い、構造機能相関の観点から新機能を開拓することを目的としている。平成24年度では両末端にアルデヒド基を有するヘキサピロールを高収率で合成し、2価のニッケル、パラジウム、銅の複核錯体を合成した。sp3炭素を鎖内に含む特徴ある鎖状ヘキサピロールを金属錯体化することにより、オリゴマーのコンフォメーション自由度を制限するとともに、らせん型に歪んだ2つの4配位平面が、直結した結合軸まわりに回転することにより、らせんの反転を起こすことの出来る分子システムを開発した。末端アルデヒドを光学活性アミンでイミン化することにより、らせんの向きを高い選択性(85%)で制御できることを示すことができた。更に、らせんの向きが一方向に完全に制御された誘導体を再結晶で得て、その可逆的な一電子酸化還元挙動を明らかにする事ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
鎖長や構成要素の配列を比較的自由に設計し、合成することの出来るオリゴピロールの合理的な合成法の開発を行うことが本研究の第一段階であるが、本研究室で以前に開発していたビスアザフルベンを利用する新規な合成法により、分子修飾の可能性を拡げることができるアルデヒド基を両末端に有するヘキサピロール、ベンゼンやピリジンを鎖内に配置したヘキサピロール等の多様なオリゴピロール誘導体を合成できる見通しを得た。ヘキサピロールのパラジウム錯体については、光学活性シクロヘキシルエチルアミンを用いて末端アルデヒド基をイミン化することにより、らせんの向きを高い選択性で制御することに成功し、その結果を速報として発表した。また、ベンゼン環を有する誘導体でもパラジウム錯体、ニッケル錯体を合成した。これらのオリゴピロール誘導体では、脂肪族アミン、芳香族置換アミン、アミノ酸エステル、アミノアルコールなどの多様な構造を有する光学活性アミンを用いることにより、95%以上の高い選択性でらせんの向きを制御できるという画期的な結果を得ることができた。従って、本研究の基盤はほぼ確定し、今後は機能開発に向けて注力することになる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、オリゴピロール誘導体の合成法を確立し、そのらせんの向きの制御法についても満足のいく結果を得ることが出来た。今後は錯体化学および有機金属化学の観点からオリゴピロール複核金属錯体の金属の反応性について検討を行うことを目的として、金属―金属結合や炭素―金属結合を有する誘導体を合成し、その性質について解明する予定である。これらの研究を新規な不斉金属触媒の開発につなげてゆく。また、π電子系を有するオリゴピロール配位子の酸化還元活性を生かした分子機能開発にも取り組んでゆく。 本研究を中心的に担っていた博士課程学生が学位を取得して、平成24年度末をもって研究室を出たが、さらに研究を加速推進するために日本学術振興会外国人特別研究員の申請も行っている。
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次年度の研究費の使用計画 |
現時点では欧州での国際学会で本研究課題について講演を依頼されており、外国出張旅費を使用する。また、国内学会でも本研究課題に関する最新の成果を複数の大学院学生が発表するので国内出張旅費を使用する。その他、物質合成に使用する薬品類やガラス器具、測定に使用する消耗品などを使用する予定である。
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