研究課題/領域番号 |
24550052
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
南条 真佐人 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50302352)
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キーワード | ポリシラン / デンドリマー / フラーレン / 紫外吸収スペクトル / 溶解性 |
研究概要 |
フェニル置換第一世代ポリシランデンドリマー(1G(Ph))にトリフルオロメタンスルホン酸と塩化アンモニウムを順に反応させ末端のフェニル基を塩素化した後,ビニル基を有するGrignard反応剤を反応させ末端に二重結合を持つデンドリマー1G(Vi)を合成した.次に,末端二重結合へ臭化水素を付加しハロアルカンを持つデンドリマー1G(CBr)を得た.その後,アジ化ナトリウムを用いてハロゲン置換基をアジ化し,アジド基を持つデンドリマー1G(N3)を合成した.さらに,1G(N3)と[60]フラーレンをトルエン溶媒中,加熱還流条件下で反応させることで1G(C60)を合成した. フラーレン導入前と導入後のデンドリマーの紫外吸収スペクトルを比較すると,フラーレン導入後では256 nmの吸収が大きくなり,320 nm付近に新たな吸収の肩が現れた.また,フラーレン導入後では吸収領域端が長波長領域(~500 nm)まで広がった.これらの紫外吸収スペクトルの変化は,末端に導入したフラーレンに起因しているものと考えられる. さらに,フラーレン自身はTHFに全く溶けないが,フラーレンを導入したデンドリマーはTHFに容易に溶けて褐色を示し,他の有機溶媒への溶解性も良好であった.合成したフラロポリシランデンドリマーは薄膜の形成が容易に行えると考えられるため,加工性の向上および機能性材料への応用が期待できる成果を得た. この他にも全年度に引き続き、直鎖状のポリシランの側鎖にフラーレンが結合した高分子化合物についても、その分子量、置換基などを変化させた高分子について合成を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度では直鎖状のポリシランの側鎖にフラーレンを導入することに主眼をおいて検討してきたが、本年度では枝分かれ構造のあるポリシランであるポリシランデンドリマーの末端にフラーレンを導入する反応を検討し、第1世代ポリシランデンドリマーの末端にフラーレンを導入したフラロポリシランデンドリマーの合成に成功し、その特異な紫外可視吸収スペクトルを明らかにすることができた。この成果は当該年度の目標をおおむね達成できたと言うことができ、次年度における種々のデバイス作成や薄膜の評価に資するものが得られたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
合成したフラーレン含有ポリシランおよびポリシランデンドリマーの光照射による電子移動反応を、紫外・可視吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルの測定により明らかにする。また、ケイ素鎖からフラーレンに一電子移動した後の電荷分離状態を、レーザー照射による過渡吸収スペクトル測定、蛍光寿命や温度依存性、波長依存性などから光反応機構などを詳細に調べる。さらに直鎖状あるいは分岐状といった構造が光励起に与える影響を検討し、従来にないσ-共役系をドナーとする光起電力性の評価を行う。 また、フラーレン含有ポリシランおよびポリシランデンドリマーの光起電力の評価を行う。ITO基板上に導電材としてPEDOT:PSS薄膜を塗布し、その上にフラーレン含有ポリシランやポリシランデンドリマー薄膜をスピンコートにより作成する。さらに膜上にMgやAlを蒸着させた右図のような装置を組み、光照射時の導電性や起電力特性などを調べる。可能であれば、電気出力の波長依存性も測定し、分子の骨格構造に由来するσ―共役の電子状態評価を電気化学的視点から探求する。
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