研究課題/領域番号 |
24550058
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
重光 保博 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50432969)
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研究分担者 |
大賀 恭 大分大学, 工学部, 教授 (60252508)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 溶媒効果 / 分子動力学 / 量子化学計算 / 反応速度理論 / 有機光物性 / 非平衡状態 |
研究概要 |
溶液内において溶質分子の状態変化への溶媒分子の状態追随限界が露呈する非化学平衡溶媒和効果(動的溶媒効果)は、反応速度や光物性に対して本質的な影響を及ぼす。その分子論的理解へ至るステップとして、古典分子動力学法(CMD)によるアプローチ可能性について検討した。 実験から得られている4-ジメチルアミノ-4’-ニトロアゾベンゼン(DNAB)のcis-trans異性化反応速度の圧力・溶媒粘度依存性データを用いた。異性化反応速度のタイムスケール(ms-s)は、通常のCMDでは到達できないため、加速分子動力学法(aMD)を導入して、長時間スケールの溶媒和ダイナミクスを追跡した。Kramers理論で表現される異性化反応速度式(低溶媒粘性極限で絶対反応速度式を包含する)に対して、aMDで得られたCMDトラジェクトリーから反応速度を外挿し、実験値との定性的一致を得ることができた。これにより、古典力学レベルで動的溶媒効果を解明する足がかりとすることができた。 応用面では、分子性結晶での蛍光変調に関連する周辺場効果をFMO法やONIOM法を用いて量子化学的に解析し、中心分子へ及ぼす周辺分子の効果を定量的に取りこんで検討した。この検討は、将来的にQM/MM-MDを用いた精密な動的溶媒効果の解析への橋渡しとなるものである。 また、理論・計算と並行して、クロメン誘導体を用いた置換基の嵩高さと異性化速度の相関から、再配列規模と溶媒再配列効果について実験データを蓄積・解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動的溶媒効果の分子レベル解明への足がかりとして、分子動力学法および量子化学計算法の有効性を検証した。分子動力学法においては、加速分子動力学方法(aMD)がトラジェクトリー解析に有効なことを検証した。量子化学計算においては、分子結晶系に対してFragment MO法 (FMO)の有効性を検証した。 実験的には、動的溶媒効果が及ぼす嵩高い置換基の影響について解析を進め、クロメン誘導体について異性化反応速度データを蓄積した。
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今後の研究の推進方策 |
動的溶媒効果が支配するする高圧下(~100MP)で出現する反応速度抑制効果(Kramers反転)を分子動力学シミュレーションで再現することを目標とする。さらに、自由エネルギー曲面を算出し、解析的モデルと比較して、Kramers反転の分子論的意義の解明を目指す。 また、非平衡周辺媒体効果の支配領域において、凝縮系が光励起分子の失活経路である円錐交差点に及ぼす特異的影響について理論的解析を進める。 並行して、クロメン誘導体その他の化合物に対して、動的溶媒効果の実験的解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
繰越助成額は、外国製ソフトウエア(AMBER)購入費の為替レート変動に該当する。当該助成額は、物品費(計算機、実験器具類)・論文投稿費・学会旅費等として適切に執行する。
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