我々はこれまで、2-フェニルピリジンを3つカルコゲン原子上に有する新規6配位カルコゲノニウム塩の合成、単離を行い、最終的にX線結晶構造解析によってその結晶構造が6配位、八面体構造で、Facial体のみが生成していることを明らかにした。 今年度はこれら化合物の酸化還元特性を調べるため、サイクリックボルタンメトリーの測定を行い、そのレドックス挙動を見積もった。結果として、いずれも0~2Vの範囲に酸化挙動は見られず、テルロニウム塩、セレノニウム塩共に、これ以上の酸化反応は難しいことが分かった。 また、それぞれのカルコゲノニウム塩について理論計算を試み、中心元素周りの結合のWiberg結合指標や電荷分布を見積もった。 さらにAIM(Atoms in Molecule)法にて、中心原子周りの結合形態について詳細に見積もった。その結果、カルコゲンー炭素結合は、十分に高配位カルコゲン化合物の結合様式範囲内に入り、結合とみなして問題ないことが分かった。また懸案であったカルコゲンー窒素結合も、いずれも結合間の鞍点(BCP)が検出され、さらにラプラシアンローの値がなんとか高配位結合の範囲に落ち着くことが分かった。これにより、これら化合物が[14-Ch-6]+という6配位で形式上中心原子に荷電子が14個という、全く新しい化学種であることが分かった。
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