本研究は、アミド構造を原料として簡易に含窒素構造を構築する手法の開発を目指すものである。本研究では、基質に塩基と活性化剤を作用させることで、系内で活性イミド酸エステルを発生させ、不安定な中間体を単離することなく、単一容器で関連する含窒素構造の合成を試みる。さらに、アミドの系内活性化と遷移金属触媒反応と組み合わせることによって、多様な含窒素化合物に簡易にアクセスすることを目指している。 初年度の24年は、アミドから活性イミド酸エステルを発生させる段階の条件を見いだすことを目標とし、基質、塩基、活性化剤、求核剤、溶媒、温度など様々な反応要素について、網羅的な検討を行った。基質としては、アミドだけではなく、カルバミン酸や尿素化合物を用いた。塩基としては塩基性の低いピリジンやコリジン、ジイソプロピルエチルアミンなどのアミン塩基から、強塩基であるKHMDSやノルマルブチルリチウム、水素化ナトリウムなどを検討した。活性化剤としては、様々なカルボン酸クロリド、クロロギ酸誘導体、スルホニルクロリド誘導体、無水トリフルオロメタンスルホン酸、N-フェニルビス(トリフルオロメタンスルホンイミド) などを検討した。求核剤としては主にアルコールと1級、2級アミンを用いた。検討の結果、活性化剤がHN-C=O構造の酸素原子上に結合し望む活性イミド酸エステルを生じる反応と、窒素原子上に結合しイミド構造を与える望まない反応が併発することが明らかとなった。両反応の比率は主に用いる活性化剤に依存する傾向があり、無水トリフルオロメタンスルホン酸やN-フェニルビス(トリフルオロメタンスルホンイミド) を用いた時、最も良好な結果となることが示唆された。
|