研究課題/領域番号 |
24550064
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研究機関 | 新潟薬科大学 |
研究代表者 |
中村 豊 新潟薬科大学, 応用生命科学部, 教授 (20267652)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 合成有機化学 / 天然物化学 / フェイズタグ法 / 迅速合成 |
研究実績の概要 |
昨年度に疎水性のトリチル(Trt)基を用いて、グラッシィペプトリド類の共通骨格となるテトラペプチドの合成を達成したので、このユニットのグラムスケールの合成を行うとともに南半球に相当するヘキサペプチドの合成について検討を行った。ドコシルオキシ(C22H45O)が2本導入されたトリチル基でチオールを保護したシステイン誘導体にFmocストラテジーでN末端側にFmoc-D-アミノブタン酸、Fmoc-S-Trt-システイン、Fmoc-D-N-メチルフェニルアラニンを順次縮合し、テトラペプチドを合成した(6工程収率83%)。この際、疎水性Trt保護合成中間体は反応混合物にアセトニトリルを加えることにより結晶として析出させて吸引ろ過によって分離することができた(6工程収率63%、カラム精製なし)。迅速に目的とするテトラペプチドを比較的大量に合成できることことを明らかにした。しかしながら、これをC成分としてヘキサペプチドとするために、C末端保護基であるアリルエステルの除去を行ったところ、目的のペプチドカルボン酸を得ることができなかった。一方、グラッシィペプトリド類の北半球部分に相当するデプシテトラペプチドの合成についても検討を行った。この合成には4,4’-ジドコシルオキシジフェニルメチルエステルの利用を考え、保護基となる4,4’-ジドコシルオキシジフェニルメタノールを合成し、Fmoc-プロリンのエステル化を行った。その結果、対応するエステルは得られるものの疎水性タグとして導入したアルコキシ基の影響で非常に酸に鋭敏になったおり、シリカゲルの酸性程度で脱保護されてしまうため保護基として機能しないことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
交付申請書における平成26年度の研究実施計画では、開発した疎水性保護基を用いてグラッシィペプトリドFとGの迅速合成の検討を行う予定であった。疎水性のフェイズタグとして2本のドコシルオキシ基を導入したトリチル保護基を用いてグラッシィペプトリド類の共通骨格となるテトラペプチドの合成について検討を行い、疎水性保護基の特性を利用して簡便・迅速に合成中間体を分離でき、効率的に標的分子を合成できることを示すことができた。しかしながら、グラッシィペプトリドFとGの全合成には至らなかった。 したがって、当初の研究目的の達成度という点では若干の遅れは認めざるを得ない。このことは以下のことに起因するものと考えている。まず、疎水性トリチル基の他、北半球フラグメントの合成で利用を考えていた疎水性ジフェニルメチルエステルについても、疎水性のタグとして導入したアルコキシ基の影響でオリジナルの保護基に比べて安定性が著しく異なっており予想外の条件で脱保護等が進行してしまったこと。さらに、疎水性保護生成物を純度よく合成するかが鍵であり、反応条件等の詳細な検討が必要であることである。
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今後の研究の推進方策 |
研究の遅れから研究期間を1年間延長していただけたので、今年度は、まずはグラッシィペプトリドFの全合成の達成を目標に研究を行う。昨年度、アリルエステルの除去条件での安定性で問題が生じた疎水トリチル保護基の安定性を評価するとともに共存するC末端エステル保護基を疎水トリチル保護基を損なうことなく除去できる条件を見いだし、グラッシィペプトリドFの南合成ヘキサフラグメントを合成する。また、グラッシィペプトリド類で共通となるデプシテトラペプチドである北半球フラグメントの合成は、疎水性フェナシルエステルあるいが疎水性9-フルオレニルメチルエステルを利用して行うこととし、その保護化剤の合成と保護基としての利用の可否を明らかにするとともに北半球デプシテトラペプチドへ導く。合成計画は当初の予定通り2つのチアゾリン環は最終段階で構築することとし、合成した2つのフラグメント(北半球と南半球)を連結後、両末端の保護基を除去し、マクロ環化することで環状デプシチオペプチドとしればようことになる。各段階の疎水性保護体は反応混合物にアセトニトリルのような極性溶媒を加えて疎水性保護体を析出させることによって分離を行ない、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製を行うことなく反応を進める(必要に応じて精製をしてもよい)。この検討によって、分離・精製段階を大幅に省略してすることによって迅速に標的化合物を入手できるかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は比較的大量に疎水性保護化剤を合成し、グラムスケールでペプチドフラグメントの合成を行ったものの、予想外の副反応が進行してしまったため研究に大きな進展がなかった。そのため試薬類などの消耗品の購入量が少なくなり次年度に繰り越されることになった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度はグラッシィペプトリドFの合成を目指してグラムスケールでの合成に着手するために高価な非タンパク構成アミノ酸、大量の試薬類、溶媒などの消耗品を購入する必要があるため、これらの購入費用に充てる。
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