研究概要 |
1. 蒸発光散乱検出器をオンライン接続した高分解能LCMSに基づき、緑色光合成細菌をモデル生物としたグリセロ脂質ライブラリーの構築を行った(本研究の第一の目的)。生育温度(30-55℃)が異なる7種類の緑色細菌に対して、網羅的な解析を行った。その結果、細菌の生育温度とグリセロ糖脂質分子の脂肪酸の炭素鎖長に明確な相関が確認された(生育温度の上昇に比例し脂肪酸鎖長も増加)。更に、この脂肪酸鎖長の連続的な伸長は、細菌が生産するクロロフィル色素分子の炭化水素鎖長とも相関性が見られた。これらの疎水性炭化水素鎖長の生育温度に対する依存性は、疎水性相互作用に基づく光合成器官の耐熱性の獲得戦略と解釈された。得られた成果は、学術論文1報として公表した:Mizoguchi et al., Photosynth. Res. 114, pp. 179-188 (2013年). 2. 見えない脂質分子の微細構造が誘起する生体膜特性への影響を、見えるクロロフィル色素をプローブとして評価した(本研究の第二の目的)。緑色細菌の光収穫アンテナ器官(=グリセロ脂質一分子膜より成るミセル様構造体)を生体膜モデルとし、pH変化によるプロトン透過性の評価を行った。アンテナ器官に内包されるクロロフィル色素の化学的・分光学的特性を活用することで、プロトン透過性(=アンテナ器官の耐酸性)へのグリセロ脂質分子の微細構造の影響を検証した。その結果、脂肪酸部の不飽和構造がプロトン透過性に関与することが確認された。得られた成果は、学術論文1報として公表予定である:Mizoguchi et al., Bioorg. Med. Chem., in press (2013年) (doi: 10.1016/j.bmc.2013.04.030).
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